第6回は日本料理「蘭」をご紹介します。案内役は三菱重工業の一元裕治総経理です。
一元裕治総経理
林森北路の「蘭」と聞いて、最初はスナックの名前かと思ったが、一歩店に入ればれっきとした日本料理店だった。「いらっしゃいませ」。白い綿のワンピースを着た可憐な女性に迎えられた。この店のオーナーながら看板娘も兼ねる劉さん(愛称なっちゃん)だ。
今年初めに台北に着任した一元さんが初めて蘭を訪れたのは、知人の日本人駐在員に連れられのことだった。その後は、会社の仲間や出張者らと来ることが多くなった。日本語も話せるなっちゃんから、北京語や台湾語会話も勉強している。
最初に出てきたのは、台湾ではよく知られた野菜の「マコモ(タケ)」。タケノコを少しスマートにしたような外見を持つ。なっちゃんによると、6~9月が旬で、宜蘭や埔里(南投県)などが有名な産地なのだそうだ。
こんがりと焼き色のついた皮をむくと、黄色がかった白い中味が出てきた。塩コショウでいただく。みずみずしくて美味だ!トウモロコシのようなあっさりとしたほのかな甘みとタケノコのようなしゃきしゃきした食感がたまらない。くせのない、それでいてくせになる味だ。
網焼き器まで購入
実は一元さんも蘭でマコモの魅力に取りつかれた。毎朝の日課であるジョギングで一汗流した後、朝食として近くの朝市でマコモを買うことがあり、おいしく焼くために、日本に出張した際、網焼き器を購入したほどの凝りようだ。
続いてふぐの一夜干し。ぶりぶりした身をレモンと大根おろしでいただく。背骨の部分を残すと「骨と骨の間がおいしいのに」と一元さんからご指摘を受けた。お酒と一緒に味わうと、飲兵衛(のんべえ)の幸せが分かるのだそうだ。
続いて登場したのは、なっちゃんお薦めのポテト明太焼きが登場。すりつぶしたポテトにマヨネーズと明太子を混ぜ合わせた料理だ。口当たりが非常にまろやかな理由は、隠し味の生クリームだった。お酒の飲めない人にも好まれる逸品だ。
最後に特別サービスでかぼちゃの煮つけが出てきた。砂糖は全く使っていないが、かぼちゃの素の味で十分甘い。
店内はカウンター席とテーブル席3席と比較的こじんまりしているが、内装は新しい。それもそのはず、今年1月に近所から移転したばかりだからだ。
カウンター越しには日本の焼酎が所狭しと並ぶ。ボトルキープの名札には日本人の名前がずらり。その中に「蘭」という芋焼酎を見つけた。聞けば、鹿児島産で赤ラベル(25度)と黒ラベル(40度)の2種類があり、「台湾で輸入販売しているのはうちだけじゃないかな」(なっちゃん)とのこと。一元さんも鹿児島の出身だ。
一元さんのボトルキープを除いて、料理7品とビール1本で1,660元だった。ここに通うお客さんの楽しみには、なっちゃんとの軽妙な会話も含まれるのではないかとみた。
満腹感とほろ酔い加減の足取りで、二次会のスナックへと移動した。
取材/ワイズコンサルティング・七沢愛果
「蘭」
住所:台北市林森北路119巷20号1楼
電話番号:02-2542-7868
営業時間 午後6時~午後11時30分(日曜定休)
鹿児島産の焼酎「蘭」