記事番号:T00090485
国家発展委員会(国発会)の推測によると、台湾の65歳以上の高齢者人口は2026年に総人口の20%以上を占める見込みである。さらに、35年には4人に1人が65歳以上の高齢者となると予測されている。高齢化が進む中、企業はそれに対応したさまざまなビジネスを展開している。
新規参入と販路の多様化
台湾大手ネットワーク機器メーカーの智邦科技(アクトン・テクノロジー)は16年に医学業界で有名な陽明大学と提携し、智宇生医(Oenix Biomed)を設立した。智宇生医の主な事業内容はシルバーケアの器材とシステムの開発および販売で、照明器具と連結するスマートマットレスを19年に発売した。また、日本の大和製罐株式会社と代理契約を締結し、高齢者向けの介護食品「エバースマイル」シリーズを台湾に輸入して販売している。
介護用品の販売チャネルは主にネット販売、店頭販売、電話注文がある。例えば、北部の介護施設を中心に電話で発注できる販売業者や長期介護用品の特設ページを作る通販サイトなど。中でも富邦集団傘下の大手インターネット通信販売サイト「momo購物網」は長期介護用品に注力している。
なお、ほとんどの参入企業は医療器具、サプリメント、衛生用品などの販促に注力しているが、イベントを開催するための用品や催事用品もニーズがある。台湾政府は定期的に介護施設の評価を行い、施設のイベントや催事の開催も評価するためだ。
政府予算、17年の7倍に
20年前の台湾の平均寿命(0歳時における平均余命)は76歳で、65歳以上の高齢者の人口は230万人だった。医療水準の向上およびヘルスケアブームを受け、19年時点で平均寿命は81歳まで延び、65歳以上の高齢者の人口は130万人増加し、360万人となった。それに加えて、年々減少する新生児数、世界一低い合計特殊出生率(1人の女性が一生の間に産む子供の数に相当)で、台湾の人口構造はハイスピードで老化している。
台湾政府は超高齢社会に対応するため、07年に「長期照顧十年計画」を打ち出したが、本計画の長期介護サービスは利用しにくく、過去10年のカバー率は35%にとどまっていた。そのため、新たに「長期照顧服務法」を制定し、17年6月3日に施行した。
適用対象に「49歳以下の障害者」、「50歳以上の認知症患者」などを加え、介護サービスは▽入居型介護サービス▽地域密着型介護サービス▽その他支援サービス──の3つのカテゴリーに分け、基本サービスを自宅近くで受けられるようにした。同時に、関連従事者確保体制を構築した。
本法が施行されてから、政府予算計画は7倍に成長した。
健康な独居高齢者のケア問題
台湾政府が主導する長期介護サービスの適用対象は一定条件を満たした高齢者と障害者のみだ。健康である貧困な独居高齢者は適切なケアや補助が受けられない状況だ。
19年の統計によると、独居高齢者世帯数は55万世帯を超え、13年と比べて60%も増加し、そのうち貧困者は約1%を占める。なお、長期照顧服務法の対象外である独居高齢者は、事故や急病など緊急事態発生時の対応がどうなるか気にかかる。
長期介護だけではなく、高齢者ケア問題も台湾社会の一大課題である。今後の政策の動きとシルバー産業の成長が期待できる。
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