ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム グループ概要 採用情報 お問い合わせ 日本人にPR

コンサルティング リサーチ セミナー 経済ニュース 労務顧問 IT 飲食店情報

第569回 訴訟上の和解


ニュース 法律 作成日:2025年5月12日_記事番号:T00121602

知っておこう台湾法

第569回 訴訟上の和解

 訴訟上の和解とは、民事訴訟の当事者が裁判官の主導のもとで、訴訟の目的(原告の請求事項)の全部または一部の事項について互いに譲歩した上で合意し、裁判所が調書に記録して、それに確定判決の効力を持たせることを指します。

 主な規定は以下のとおりです。

■確定判決と同じ効力

 台湾の民事訴訟法(以下「本法」といいます)第377条第1項には「裁判所は、訴訟がいかなる程度にあるかを問わず、隨時和解を試みることができる。受命裁判官または受託裁判官もこれを行うことができる」とあり、本法第377条の1第1項にも、「当事者の和解の意思が極めて近くなっている場合、双方当事者は、裁判所、受命裁判官または受託裁判官に申し立て、当事者の表明した範囲内で和解案を定めることができる」とあります。本法第379条第1項には「和解を試みて成立した場合には、和解調書を作成しなければならない」とあり、本法第380条第1項には、「和解が成立した場合は、確定判決と同じ効力を有する」とあります。

■和解のメリット

 訴訟上の和解の最大のメリットは、以下のものが含まれます。

一、訴訟は和解が成立し次第終了となり、原告または被告はいずれも和解の内容に不服を唱えることはできないため、紛争を迅速に解決して、当事者における訴訟に要する時間、精力および費用などの継続的投入を節約することができる。

二、裁判所の判決は原則として、原告の請求事項についてしか決定を下すことができないが、和解ではこの制約がないため、原告が主張していない事項であっても、双方が合意しさえすれば、和解の内容に盛り込んで約定できる。

三、訴訟上の和解は、ひとたび成立すれば直ちに裁判所の確定判決に相当する効力を生じ、いずれか一方の当事者が和解条項を遵守しなかった場合、他方当事者は直ちに強制執行を申し立てることができる。

■双方に一定の利益

 日本の民事訴訟法にも訴訟上の和解の制度があり(民事訴訟法265条以下)、また、関連規定は台湾法のものとかなり似ています。

 訴訟で紛争を解決する場合、当事者にとっては、裁判所が判決を下すまで、勝訴するのかそれとも敗訴となるのかを予測するのは往々にして困難です。

 しかし、和解を進める場合は、互いに譲歩することが必要となるため、和解が成立したときには双方ともある程度利益を得ることができ、100%の勝者または敗者は存在せず、訴訟と比べて、より平和的かつ円満に双方当事者間の対立や衝突を解決することが可能です。

蘇逸修弁護士

蘇逸修弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、法務部調査局に入局。板橋地方検察署で、検事として犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などの業務を歴任。2011年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

知っておこう台湾法