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第180回 公序良俗を害する商標の審査基準


ニュース 法律 作成日:2015年5月27日_記事番号:T00057191

産業時事の法律講座

第180回 公序良俗を害する商標の審査基準

 商標法の規定によると、商標が公の秩序または善良の風俗(以下「公序良俗」)を害している場合は商標登録ができません。

 そこで、商標審査時にできる限り客観的に公序良俗を害しているかを判断するため、経済部智慧財産局(知的財産局)は今年5月11日、「商標妨害公共秩序或善良風俗審査基準(公序良俗を害する商標に関わる審査基準)」を公布、即日施行しました。

 この基準の最も重要な点は、公序良俗を害する商標として以下の10種を挙げ、それぞれ具体例を示していることです:

1. 犯罪、暴力、テロリズム、反乱を招く、または社会秩序を乱す恐れがある

 例えば、▽美髪、美容、サウナなどのサービスに「Cocaine(コカイン)」を使用する▽輸入代理業に「BLACK market(闇市)」を使用する▽観賞用動物、観賞魚などに「賓拉登(ビンラディン)」を使用する▽科学装置、医療器材に「希特勒HITLER(ヒトラー)」を使用する──など。

2. 民族の尊厳を冒瀆(ぼうとく)している

(1)中華民族をおとしめる、またはマイナスのイメージを連想させる。例えば、「東亜病夫」(清朝末期に西洋人が使用した中国人に対する蔑称で、「東アジアの病人」の意)をビタミン剤などの商品に使用するなど。

(2)国内の民族をおとしめるまたはマイナスのイメージを連想させる。例えば、「南蛮」(中国が南方の少数民族を差別・侮蔑する言葉)をレストランなどで使用することは民族の対立を招く。また、「撒奇萊雅SAKIZAYA」(台湾原住民族の名称)を避妊具、マージャンなどの商品に使用することは、マイナスのイメージを連想させる。

(3)国外の民族をおとしめる、またはマイナスのイメージを連想させる。例えば、「DIRTY ENGLISH」を アフターシェービングクリームやオーデコロンなどの商品に使用するなど。

3. 宗教の尊厳を冒瀆している

 例えば、▽キリストの肖像を衣類、シルクスカーフ、革製品などに使用する▽「弥勒(菩薩の名称)」をナイトクラブ、歌唱ホール、ダンスホール、賭博場などで使用する──など、当該宗教の信者を明らかに冒瀆することになる。

4. 特定のコミュニティーまたは団体の尊厳を冒瀆している

 例えば、「白色恐怖KMT TERROR」を酒類に使用するなど。「KMT TERROR」には「国民党の恐怖政策」の意味があり、容易に民衆の恨みを煽(あお)ることになる。

5. 特定の人物を冒瀆している

 例えば、「馬央九」を服飾用手袋に使用するなど。国家元首を冒瀆、やゆする意味がある。

6. 人に恐怖の念を抱かせる、または迷信を信じさせることで心身の健康に影響を与える

 例えば、「巫毒娃娃(呪い目的のブードゥー人形)」をレース、中国結びなどの商品に使用するなど。他者に霊能力に対する恐怖の念を抱かせる。

7. 風俗を乱す、わいせつ、低俗、下品な言語、図形

 例えば、▽「王八 (スッポンの別称) 」を煮卵、茶葉ゆで卵、鉄卵、スッポン卵などの商品に使用することで、消費者に「王八蛋(ばか野郎の意)」を連想させ、消費者を軽蔑、ののしるニュアンスを含む▽「古墓春宮」を電子出版サービスに使用することで、消費者を不安にさせ、社会一般的道徳観念に反することにもなる。

8. 歴史上の著名人または近代の著名故人の肖像、名称

 例えば、▽「賈伯斯(アップル共同設立者のスティーブ・ジョブズ)」をコンピュータハードウエア設置、ソフトウエアインストール、修理などのサービスに使用するなど、不当な理由で故人の名声を利用していることが明らか▽孔子画を避妊具、便器、マージャンなどの商品に使用するなど、聖人たる孔子の歴史的イメージを傷付け、公序良俗に悪影響を与えることは明らか──な場合。

9. 著名歴史小説の虚構人物の名称

 例えば、▽「唐三蔵(三蔵法師)」をたばこ、ウイスキー、ビンロウ、マージャンなどの商品に使用することで、小説の中の人物への侮蔑の念を抱かせ、公序良俗に悪影響を与える▽「潘金蓮(『水滸伝』の登場人物、他者と共謀して夫を殺害した)」を幼稚園、学習塾などのサービスで使用する──など。

10. その他社会公共の利益に反する、または倫理・道徳観を破壊するもの

 例えば、「黒心」をピーナッツ油などの食用油に使用し、劣悪な油を混入している、または「黒心」商品を支持するような感覚を消費者に抱かせることで、国家の公共の利益に反する。

言論の自由への干渉か

 「信義誠実の原則」と「公序良俗」は法律上の二大原則で、全ての法律行為は両原則に従わなければ法律上の保護を受けることはできません。しかし、「契約自由の原則」により、国家は自らに制約を課する必要があります。そのため、他の法律の規定が適用できず、かつ当事者の行為が社会の許容性を超えたものである場合以外は、これら二大原則により、国家が個人の行為に干渉すべきではありません。

 知的財産局がこのたび制定した審査基準が示している具体例が、公序良俗を害していると言えるかは検討が必要です。特に、中国の古代小説の登場人物、または虚構の人物までも公序良俗と関連付けたことは、「知的財産局による言論の自由への干渉」と見られてもおかしくありません。この審査基準は近い将来、知的財産裁判所の厳格な審査を受けるでしょう。

徐宏昇弁護士事務所

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