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第55回 木材ごとの音を生かす、高級ウクレレのミラー/台湾


ニュース その他製造 作成日:2021年2月25日_記事番号:T00094815

台湾産業ココがスゴイ

第55回 木材ごとの音を生かす、高級ウクレレのミラー/台湾

 ウクレレはハワイアン音楽に使用されることが多い小型の弦楽器です。リラックスできる音色が好きで、筆者は1年以上前から、週1回、生涯学習センターでウクレレを習っています。

 ウクレレの先生から、「メード・イン・台湾(MIT)の高級ウクレレブランドの工房が高雄市にあるよ」と教えてもらい、興味を持ったので、取材してきました。

手間ひまで木の弾力を残す

 取材したのはMITの高級ウクレレブランド「Millar(ミラー)」の工房。Millarは洪慶楓さんと、お父さんの洪文さんが2016年に立ち上げた、まだ新しいブランドです。ウクレレの材料の木材ごとの音、例えばアカシアは明るくて歯切れが良く、マホガニーなら温かでマイルドなどの違いを出すため、1本当たり1カ月以上の時間をかけ、木材それぞれの弾力性が残るように製作しています。

/date/2021/02/25/20uku3_2.jpg洪慶楓さん(右)と洪文さん(左)。家族経営の工房です(YSN)

 木材は高温にさらすと弾力性がなくなってしまうため、ボディーのサイドのくびれの部分以外は、熱を加えないのがMillarのこだわりです。洪慶楓さんによると、中国の工場では生産量を優先させるため、パーツの接着の際、70~80度の高温にし、3~4分で乾燥させています。一方、Millarの工房では、全て自然乾燥で、1つのパーツを接着するのに少なくとも4時間以上かかります。

 また、仕上げの塗装は、少なくとも8回繰り返します。完全に乾くのを待って次の塗装を行うため、全部で2週間以上かかります。中国の大量生産品のように、1回の塗装で艶を出そうとすると、表面がカチカチになって振動を伝えにくくなり、音がくぐもってしまうためです。

/date/2021/02/25/20uku2_2.jpg乾燥中のウクレレがずらり。塗装担当の洪慶楓さんは、待っている間に別の作業を行います(YSN)

日本メーカーでの経験を応用

 工房ではコンピューターで制御するような機械は置いていません。工程ごとの木型によって、標準化を図り、同じ製品が製作できるようにしています。

/date/2021/02/25/20uku1_2.jpg木型はウクレレのサイズ、工程ごとに製作する必要があり、現在100個以上あります(YSN)

 木型作りは洪文さんの担当。洪慶楓さんは、Millarの高品質のウクレレ作りを実現することができたのは、洪文さんの技術によるところが大きいと語りました。

 洪文さんは、かつて高雄市にあったヤマハの工場でギター製造の技術責任者を務めていました。一方、洪慶楓さんは、下請け会社でヤマハ向けの工具を手掛けていました。ヤマハの高雄工場閉鎖が決定したことを受け、二人は06年に中国・広東省に渡り、現地で台湾人が経営するギター工場やヤマハの中国工場向けの仕事を受注し、生計を立てていました。

 洪慶楓さんは故郷の高雄市で仕事がしたいと、12年に洪文さんと帰台。当時の台湾はウクレレブームで、ギターよりもウクレレの需要があったこと、ウクレレを作るのにギター製造の技術が応用できることから、ウクレレの工房を開設。4年間、台湾の楽器ブランド「Pukanala(プカナラ)」のウクレレの受注生産を手掛けて技術を磨き、16年に独立を果たしました。

品質と価格で海外から注目

 工房で1カ月に生産できるのは50本ほど。年間では600本で、うち100本を台湾で販売し、残りは輸出しています。中国向けが200本と最大の輸出先で、日本に100本のほか、カナダ、英国にも輸出しています。海外では、コストパフォーマンスが高いと人気なんだそう。

 Millarのウクレレは、初心者向けのシンプルな7,000台湾元(約2万6,000円)のモデルから、ハワイアンコアなど価格の高い木材を使ったり、艶のある塗装などを施したりした最高級の2万5,000元のモデルまで23種類。オーダーメイドも8万元以上で受け付けています。同じ品質のハワイ製を探そうとしたら、3倍くらいの値段がするそうです。なお、台湾で大量生産品は1,000元台から売られています。

 筆者も、Millarのウクレレの購入を検討中です。少し大きめの23インチのコンサートウクレレと呼ばれるタイプで、木材はローズウッド、しま模様の縁取りのあるモデルで、優しげな落ちいた音色に一目(一耳?)惚れ。ただ、2万元弱と購入するのに少し勇気がいる価格なので、ウクレレがもう少し上達した際のご褒美にする予定です。

/date/2021/02/25/20uku4_2.jpg筆者が購入検討中のモデル。上部の弦を調整するペグがピンクでかわいらしいのも気に入りました(Millar提供)

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