記事番号:T00112432
【係争事由】性別平等工作法第21条第2項違反に対する罰則に取消訴訟
【裁判所】最高行政裁判所
【案號】最高行政裁判所109年度上字第114号行政判決
【判決日】2020年3月5日
【上訴人】新北市政府
【被上訴人】乙会社
【申立人】甲
【訴訟の経緯】
甲は、2014年7月16日から2017年3月6日まで、乙会社の作業員として働いていました。彼女の申し立てによれば、在籍期間中に乙会社に生理休暇を申し出る際、乙会社は甲に会社まで行って試験紙で検査を行い、写真を撮って保存することを要求しました。
新北市政府は乙会社が性別平等工作法第21条第2項に違反したとし、乙会社に対して10万台湾元(約46万円)の過料を科し、乙会社の企業名と責任者の名前が公表されました。
乙会社はこれに不服とし、行政不服の手続きを経て訴訟を起こし、一審では、乙会社の要求を認められ、元の処分が取り消されました。
その結果、新北市政府は不服とし、この事件の上訴を行いました。
【上訴人の主張】
(一)乙会社は甲が生理休暇を申請する際、会社に試験紙の確認のために戻るよう要求し、写真を撮って証拠として保存させました。そうしない場合、生理休暇は認められず、私事休暇や有給休暇を取らなければならず、無理に女性の従業員に交通費を増やさせ、皆勤ボーナスも削減されます。これは性別平等工作法第21条第2項に定められている不利益処分に該当します。
(二)これにより、追加の交通費がかかるだけでなく、甲の女性の人格権を侵害し、屈辱感を抱かせることとなり、女性従業員が生理休暇を取ることをためらうようになり、体の健康に影響を与える可能性があります。
(三)乙会社の資本額は1億元であり、大規模な事業体に属しているため、コンプライアンスを遵守する能力を有しています。しかし、法を知りながら違法行為を行い、事態は重大です。新北市政府が乙会社に対して過料を科すことは、行政罰法第18条第1項の規定に合致しています。
【裁判所の判決】
原判決は破棄されました。
被上訴人(乙会社)は第一審での訴えが却下されました。
【裁判官の見解】
(一)憲法第153條第2項及び改正追加條文第10條第6項によれば、国家は女性の人格の尊厳を守り、男女の実質平等を促進する責務があります。そして、「性別平等工作法」は、憲法による男女平等精神を実現するために制定されました。
また、2014年1月16日に性別平等工作法施行細則第13條を改正し、雇用主が休暇等の証明書類を要求する規定から、「生理休暇」の部分を削除しました。
(二)乙会社が女性に会社での検査を要求することは、プライバシーを侵害する手段を用いて、生理休暇の申請手続きを極めて困難にすることであり、明らかに生理休暇の申請を妨げています。
これは既に性別平等工作法の不利益処分の要件に合致しています。新北市政府が乙会社に対して同法第38条の規定に基づいて裁定を下すことには、十分な根拠があります。
【解説】
(一)乙会社は従業員のプライバシーを侵害し、恥ずかしさを感じさせることで女性従業員が生理休暇を取るのを妨害しています。これは性別平等法に違反しています。したがって、最高行政法院は原判決を是正し、新北市政府が乙会社に対して下した裁罰を認めました。
(二)この事件の争点は、「不利益処分」の解釈にあります。原審では、生理休暇を申請した場合に「試験紙+写真撮影」との措置は不利益処分には該当しないと判断しましたが、最高行政裁判所は、これは「不利益処分」に該当すると認定しました。
(三)企業が注意すべきなのは、病気休暇には証明を求めることができますが、生理休暇には証明を要求することはできないということです。
本コラムで紹介する裁判結果は、数ある裁判の一判例にすぎず、絶対的なものではありません。個々のケースによって異なる判断が下されることをご了承下さい。