ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム 会社概要 採用情報 お問い合わせ

コンサルティング リサーチ セミナー 在台日本人にPR 経済ニュース 労務顧問会員

第16回 従業員と会社との法的関係


ニュース 法律 作成日:2013年3月4日_記事番号:T00042359

知っておこう台湾法

第16回 従業員と会社との法的関係

 台湾新竹地方裁判所は2013年1月3日、12年度労訴字第79号の判決を言い渡し、従業員と会社との法的関係が「労働関係」であるのか「委任関係」であるのかについては、従業員の職務名などを区別の基準とするのではなく、職務上の従属性、服従性などにより判断しなければならないとの判示を行った。

「委任関係」を主張、解雇手当拒否

 本件事案は、被告(元支配人)が正当な理由なく原告(会社)を解雇したとして、労働基準法の規定に基づき、原告が被告に対し60万台湾元の解雇手当などを請求したものである。被告は「原告の職務名は一般的な委任契約においてよく使用されている『支配人』であり、被告との関係は『労働関係』ではなく『委任関係』であるため、労働基準法は適用されない」と反論して、解雇手当の支給を拒んだ。

強い服従義務、「労働関係」を認定

 裁判所は審理の結果、次の通り判断した。

 「従業員と会社との法的関係における労働と委任の区別において、労務提供者の職務名、職務内容、報酬の多寡などのみを判断基準とするべきではない。労働契約では、従業員は職務上および組織上、雇用主に従属し、雇用主の指示に対して強い服従義務を有する。それに対し、委任契約は委任事務の完了を目的としており、また、委任契約では一定の事務の処理が委任され、委任者の授権の範囲内で、受任者は自らの裁量により一定の事務の処理方法を決定することができる。本件において、原告の職務名は、一般的な委任契約においてよく使用される『支配人』であるが、実際には原告は職務上、被告に対し強い服従義務を有し、かつ被告は原告の雇用に当たって、会社法における支配人選任の手続きを経ていないため、原告は会社法における委任された支配人でもない。従って、原告と被告の関係は労働関係であり、労働基準法が適用されなければならない」。

 外国企業が台湾において従業員を雇用する際、「支配人」という職務名で契約する場合でも、雇用と判断され、労働基準法が適用されるケースがあることに注意する必要がある。 

*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

 

黒田法律事務所・黒田特許事務所 

1995年に設立、現在日本、台湾、中国の3カ所に拠点を持ち、中国法務に強い。 現在、13名の弁護士、6名の中国弁護士、2名の台湾弁護士、1名の米国弁護士及び代表弁護士を含む2名の弁理士が在籍しており、執務体制も厚い。
http://www.kuroda-law.gr.jp/ja/tw/

日本・台湾・中国の法律はお任せ!
「ワイズリーガル会員」

http://www.ys-consulting.com.tw/legal/join.html

<お問い合わせ>
ワイズコンサルティング 
TEL:02-2528-9711
Email: member@ys-consulting.com

蘇逸修弁護士

蘇逸修弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、法務部調査局に入局。板橋地方検察署で、検事として犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などの業務を歴任。2011年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

知っておこう台湾法