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記事番号:T00051616
2014年7月18日15:39

 11月29日の統一地方選挙が4カ月後に近づいてきた。県市長選の候補者は既におおかた出そろい、選挙戦が動き始めているが、注目選挙区の一つである台北市では、国民党公認候補である連戦同党名誉主席(77)の長男、連勝文氏(44)の勢いが上向かない。


13日開かれた国民党主催の初の選挙集会で、馬英九総統(右)と和解を演出した連勝文氏(左)。連氏は昨年の馬総統と王金平立法院長の政争の際、馬総統の手法を批判していた(中央社)

世論調査でリード許す

 13日付蘋果日報の「あすが投票日ならばどの候補者に投票するか」というアンケート調査で、連氏32.82%に対し、野党陣営代表の柯文哲氏(54)が44.33%と11.51ポイントの差を付けられた。国民党寄りの中国時報が15日に掲載した同一のアンケートでも連氏30.9%、柯氏38.6%で、差は7.7ポイントに縮まったもののリードされていることに変わりはない。中国時報の調査では、連氏は柯氏より一回り若いにもかかわらず、若者世代に人気がないことも明らかになっている。特に20代の支持率は連氏22.6%に対し柯氏58.1%と圧倒的だ。

 連勝文氏の最大の敵はその「特権階級」イメージだろう。父の連戦氏は政界最高の資産家と言われ、副総統を務めていた1999年に申告した財産は、台北市内の不動産や株式など計27億9,000万台湾元に上る。連勝文氏自身も10年に1億1,800万元の財産を申告しており、親子合計で30億元近い。連勝文氏はこれに加え、1坪270万元以上、管理費だけで年間30万元に上る台北市でも最高クラスの高級住宅「宏盛帝宝」に住み、かつてはBMWやポルシェ、ベンツなどの高級車を乗り回し、女性芸能人と浮名を流し、友人とのパーティーで1本20万元のワインを開けたことなどが報じられている。庶民が皮肉を込めて呼ぶ台北市の特権階級王国「天龍国」の典型的な住人像なのだ。

 今週15日、連氏は不動産仲介業者の集会で「南港内湖副都心構想」の政見を話した際、「内湖、南港は夜真っ暗で、コンビニエンスストア、スーパーマーケットはおろか伝統市場すらない」と見事な失言をした。郝龍斌台北市長が「連氏は内湖第4、第5再計画区を発展させる必要性を話したかったのだ」とすかさず助け舟を出したものの、発言は直ちに「帝宝住まいの御曹司の目には内湖・南港はそのように見えるのだ」と批判を受けた。

弱い公約訴求力

 連氏のさらなる欠点は公約の訴求力が弱いことだ。台北市はにぎわいの中心が清朝時代の淡水河沿いから東へ東へと移ってきた歴史を持ち、今では西部が取り残されてしまった感がある。連氏は大同区、中正区、万華区の「西区」復興をさせて市政の均衡な発展を目指す目標を掲げ、それに伴って市政府機能の一部を台北駅付近に移転すると表明したところ、「無駄遣い」「『西区』も地価高騰に見舞われる」などと批判を浴びた。

 また、新生高架道路の地下化を訴えた際も、「下に堀があり台湾鉄路(台鉄)や台湾高速鉄路の線路もあって莫大な経費がかかる」とやり玉に挙げられた。

 一方、柯文哲氏の最大の公約は「5万戸の賃貸専門の社会住宅を建てる」というものだ。実現性はともかく、地価高騰という台北市が抱える最大課題に焦点を当てておりアピール力は高い。連氏と柯氏のどちらが庶民目線に立っているかは一目瞭然だろう。

 連氏が世論調査の低評価を脱せられるかは、一にも二にも特権階級イメージを払拭(ふっしょく)できるかにかかっている。実は連氏の筆頭公約は「当選した場合、市長としての給料をすべて公益事業に寄付する」だ。特権階級イメージの悪影響を分かっているからこそ表明したとみられるが、「内湖と南港は真っ暗」などといった失言を今後も繰り返すようであれば、イメージ払拭はおろかますます庶民からかけ離れた印象が強まるだけだろう。

 ちなみに連氏は台北市長への立候補を決めるに当たり、国民党上層部から「帝宝から早めに引っ越すべき」という提案も受けたものの断っている。だが、本来は早々に帝宝から出て、庶民目線に立った公約を積極的に打ち出すべきなのだ。連氏は柯氏の「社会住宅5万戸」公約に対し「財源がない」と批判するが、では地価高騰に苦しむ庶民はどうすればいいのか。上から目線ではなく、末端有権者の考え方の理解に取り組めないでいる連氏の迷走ぶりを見る限り、苦しい選挙戦が終盤まで続きそうだ。 

ワイズニュース編集長 吉川直矢

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