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第15回 高雄爆発事故、陳菊市長が問われた危機対応力


ニュース 政治 作成日:2014年8月15日_記事番号:T00052137

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第15回 高雄爆発事故、陳菊市長が問われた危機対応力

 大手ケーブルテレビ局、TVBSは12日、陳菊高雄市長(64)の支持率が57%へと、前回調査を行った昨年12月から7ポイント下落したと報道した。死者30人、重軽傷者314人に達した李長栄化学工業(LCYケミカル、栄化)の石化輸送管爆発事故、それに続く連日の集中豪雨への対応が批判されてのことだが、再選を目指す11月の市長選に厳しい影響があるのだろうか?


被災地復旧、石化輸送管の管理問題で、陳市長は今後も評価を問われる事態が続く(中央社)

 陳市長への批判は、ガス漏れ疑いの最初の通報から爆発まで3時間以上あったのに有効な対応ができずみすみす事故を招いたこと、地下の石化輸送管の実態を把握していなかったことを含む管理不備、復旧作業の遅れと混乱などがある。その中で最大のものは、市発注の排水溝工事が輸送管の腐食に直接関係しているとみられる問題だろう。排水溝支線の発注と完成は国民党の呉敦義副総統が高雄市長を務めていた1990年代初頭だが、呉宏謀現副市長(既に辞任決定)が当時工務局で敷設を指揮している。また、98年末に市長に就任した謝長廷氏(元民進党主席)以降の、歴代民進党市政に管理責任がないとは言えないだろう。

即刻対応、批判封じる

 この問題、および輸送管について知らなかったと称していたのに実は把握していたことが明るみになるや、陳市長は即刻謝罪し、呉副市長以下幹部4人が辞任を表明、事故の復旧作業終了後という条件で認められた。

 陳市長の対応は、不祥事が起きた際の鉄則である即座の謝罪、引責という点でまさに教科書通りだった。責任は決して回避しないというそれまで表明していた言葉通りに動き、4人の辞任表明によりさらなる責任追及への声を封じることができた。

 また、事故直後に20時間以上休まずに対応に当たったこと、最後の2人の消防局員の殉職が確定するや翌日午前中に遺族の元へ弔問に訪れ落涙したことなど、その姿勢は市民への誠意を感じさせるものだった。

 TVBSの世論調査では、年齢層別に見ると回答者が50代の場合、陳市長の支持率は66%から46%へと20ポイントも落ちている。一方、30代では下落幅が1ポイント(72%から71%へ)にとどまり、20代に至っては3ポイント上昇(71%から74%へ)しているのだ。この落差は、インターネットの情報に触れる機会が多いか少ないかということと大きく関係しているはずだ。

対立候補も声望落とす

 市長選の国民党の対立候補は、民進党員として10年末に高雄市に統合されるまで高雄県長を務めた楊秋興・行政院南部聯合服務中心主任(58)だ。楊主任は10年11月の高雄市長選で、民進党内の公認をめぐる予備選挙で敗れて離党、無所属候補として陳菊氏と争ったが惨敗、その後馬英九政権に近付いて、13年1月に高雄市にある行政院の出先機関である南部聯合服務中心の主任に就任、6月には国民党に入党したという経歴を持つ人物だ。


10日にも被災地を視察した楊主任。心なしか顔色がさえないようだ(中央社)

 楊主任は3日、馬総統と共に被災地を視察、翌4日には「爆発事故は天災ではなく人災だ。高雄市政府はその責任から逃れられない」と陳市長を批判する発言をしている。しかし、自ら先頭に立って被災者支援に動くわけでもなく「ではあなたは一体何をやったのか」と厳しい目で見られている。事故直後、高雄市は被害が甚大であることを理由に、対策特別措置法の制定、特別予算の編成、専門機関の設立の3点を中央政府に要求したが、江宜樺行政院長は、野党首長への支援を嫌ったためか全て拒否した。高雄出身の楊主任はこのとき、「地元のために全力を尽くしてくれ」と中央に拒否撤回を迫れば評価を上げただろうが、黙って見ていただけだった。

 楊主任は声望を上げるチャンスを逃し、陳市長と同様に、TVBSの同調査で支持率を21%から19%へと2ポイント落としている。

優勢は揺るがず

 陳市長は一定程度評価を落としたかもしれないが、高雄市地下への石化輸送管埋設はもともと経済部が始めたことで高雄市に全責任を押し付けるのは無理がある上、さらに楊氏の無作為によって、再選への最初の関門を無事にくぐり抜けたように見える。

 しかし、下げたとは言え国民党寄りのTVBSで陳市長57%、楊主任19%という支持率差を見るにつけ、陳市長にとって再選への危機など最初から存在しないのかもしれない。陳市長には今後も難題が振りかかるかもしれないが、楊主任は国民党に寝返った時点でかつての支持者の大部分が離れた公算が強い。民進党を離党して国民党側に付いた政治家は過去にもいたが、楊主任の場合は権勢欲があまりにもあからさまで、こうした人物が台湾意識の強い高雄でまともに戦うのは非常に厳しいとみられるのだ。

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