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記事番号:T00066895
2016年10月14日15:35

 党資産の勝手な処分を防ぐため、蔡英文政権の不当党資産処理委員会(党産会)により小切手4億6,000万台湾元と銀行口座の凍結措置を受けた国民党は運営資金不足に陥り、党職員への給与支払いが無期限延期となった。洪秀柱同党主席は先週8日、「自宅を売ってでも運営資金を確保したい」と発言し窮迫ぶりを外部に印象付けた。

/date/2016/10/14/20newscolumn_2.jpg双十節の10日、国父紀念館で開かれた「国旗を愛するカーニバル」のイベントに参加した洪主席(中)。「国民党を迫害する蔡政権の式典には出れない」と政府の公式行事には足を運ばなかった(中央社)

 同党は投資事業体の「中央投資公司(中投)」と「欣裕台公司」も不当資産と認定される可能性が強まっている。両社は運営資金の65%(2014年)を稼ぎ出しており、国有化された場合、いよいよかつての特権的な財力が失われる。

 洪主席は「党資産を失うことは惜しむに足らない。党魂・党徳を失うことの方が恐ろしい」と強調する。ただ、金力を欠いた主席が求心力を低下させることは目に見えており、「党魂」の強調に統一色が見える洪主席の場合はなおさらだ。

「それぞれの解釈」を外す

 国民党は9月上旬に開催した全国代表大会(党大会)で新たな政策綱領を採択した。同綱領では中台間で平和協定を目指すことをうたうとともに、「1992年の共通認識」(92共識)について、従来の「一つの中国、それぞれの解釈(一中各表)」の文言を削って「92共識を深化する」に置き換えた。

 92共識は中国では「核心は一つの中国の原則」であり、馬英九・朱立倫時代の国民党は必ず「一中各表」を付け足すことで中国との違いを明確にし、台湾海峡の現状維持を求める台湾の民意に沿ってきた。このため「一中各表」の削除は中国側の立場に近づく意図と受け取られ、呉敦義前副総統や朱前主席の党内有力者から批判された。もとより洪主席は1年前、総統選の党公認候補だったものの人気が低迷、「最後にはやはり(中国との)統一が必要だ」という発言が決め手となって降板させられる憂き目に遭ったことはまだ記憶に新しい。洪主席がトップとなった国民党が、中台一体化の指向性を強めることは何ら不思議ではない。

国共トップ会談の効果は

 こうした中、洪主席は11月1日に北京で習近平中国国家主席と会談すると発表した。洪主席がこの会談の場で中台平和協定など政治的に踏み込んだ発言をした場合、改めて支持を落とすとの懸念の声が党内から出ている。それは十分わきまえており発言に注意するはずとの見方もあるものの、どのような言動をとろうが、洪主席と習主席の2人が並んで握手すれば、台湾市民の目には統一色のイメージしか映らないのではないだろうか。

 蔡英文政権の支持率が落ちており、9月末のアンケート調査では不満足度が48%と、満足との回答を10ポイントも上回った。統一を拒否する一方、中台関係の悪化も望まない民意の微妙さが要因とみられる。洪主席はこのタイミングで、中国との良好な関係と、それに基づいた台湾に利益になる措置のアピールを考えたと思われるが、あまりに統一色が強過ぎるため、蔡政権への不満の受け皿にはなりにくいだろう。国民党の資産である中国との関係は、洪主席では十分な効果を発揮し得ないのだ。

 ちなみに洪主席が「家を売る」発言をした際、呉前副総統は「そんなことで党を救えるのか」と批判を浴びせた。国共トップ会談での洪主席の言動によっては、来年7月の党主席改選をにらんで両者の対立が深まることも予想される。

吉川直矢

吉川直矢

ワイズメディア

東京外国語大学中国語学科卒。大手放送局記者、海外経済情報メディアでの編集長職を経て、07年Y'sニュース創刊に参加、以来編集長を務める。専門分野は台湾政治。
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