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第61回 国民党8県市のみ優遇、中国が台湾分裂化図る


ニュース 政治 作成日:2016年9月23日_記事番号:T00066567

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第61回 国民党8県市のみ優遇、中国が台湾分裂化図る

 国民党籍および同党系無所属の県市長ら8人(傅崐萁花蓮県長、邱鏡淳新竹県長、徐耀昌苗栗県長、林明溱南投県長、葉恵青新北市副市長、陳金虎台東県副県長、呉成典金門県副県長、劉増応連江県長)が北京を訪問し、18日に国務院台湾事務弁公室(国台弁)の張志軍主任と会談した。張主任は席上、▽8県市による中国での農産品・特産品の宣伝への協力▽中国企業による8県市の農産品・特産品調達推進▽8県市による旅行推進連合の組織および中国側との連絡窓口開設──など8項目の約束をした。

/date/2016/09/23/20newscolumn_2.jpg張志軍国台弁主任(右)と握手する邱鏡淳新竹県長(左)。両者は92共識の下での中台交流継続の重要性で一致した(中央社)

 蔡英文政権発足後、中国人観光ツアー客の大幅減や、台湾農産品の調達中断などが相次いで伝えられる中、8県市の正副首長らは「1992年の共通認識(92共識)を持つ県市との交流」を求めて北京を訪問し、中国側からあめ玉を受け取った。

 20日付自由時報によると、蔡政権は今回の動きについて、8県市が自ら連携して計画したのではなく、中国側から勧誘を受けたと分析している。観光業界が中国人ツアー客の減少対策を求めてデモを行った直後のタイミング、会談した中国側官僚の階位の高さ、即座に8項目を約束したスピードなど、中国が積極的に段取りを付けたのでなければ不自然との見方だ。8人は北京を訪問しさえすれば、恩恵措置を約束されることがあらかじめ決まっていたというわけだ。

「青の8人の裏切り者」

 中国は台湾の政権交代後、公的交流の中断やツアー客削減などで圧力をかけつつ、蔡政権に92共識の受け入れを迫ってきた。台湾内部で蔡政権の対中姿勢に批判の声が目立ってきた中で、国民党系の「92共識の8県市」を優遇する姿勢を打ち出したのは、台湾社会の分裂を図る行動へと一歩踏み込んだといえる。

 民進党は当然反発しており、同党スポークスマンの林俊憲立法委員は、「昔に呉三桂あり、今に藍八奴あり」と嘆いた。ちなみに呉三桂とは山海関(河北省)を開いて清の中原進出を導いた明末の武将で、中華圏では裏切り者、内通者の代名詞であり、彼らを「青(国民党)の8人の裏切り者」と批判したのだ。

 「92共識を持つ県市」のみを優遇する方針は、果たして中国の狙い通りに実行できるのかとの指摘もある。中国人ツアー客を誘致しても、台湾本土では太魯閣(タロコ)のある花蓮県、日月潭のある南投県を除けば観光地としての魅力が薄いところばかりだ。また、台湾入境には通常、桃園、高雄、台中のいずれかの国際空港を利用するが、いずれも「92共識を持たない」民進党首長の市に位置している。それらを素通りして観光消費を全くしないことは考え難いという見方だ。

 これに対し、傅花蓮県長、林南投県長、徐苗栗県長の3人は帰台後、「3カ月後には今回の訪中の成果が明らかになる」と自信を示した。彼らが期待する経済効果がもたらされれば、民進党首長の県市の住民からも「92共識にはあいまいな態度を取っていた方が得策だ」と声が強まり、蔡政権は対応に頭を痛めるかもしれない。

 今回の動きから、依然国民党系のみを対話相手に選び、経済的利益によって台湾社会を分裂させ、蔡政権の弱体化を狙うという中国の路線が明確になった。蔡政権は十分な警戒を払うとともに、台湾市民が経済面でのメリットを実感でき、中国からの揺さぶりの影響を低減できる方策を考えるべきだろう。

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