ニュース 法律 作成日:2014年5月5日_記事番号:T00050109
知っておこう台湾法公平交易委員会(公平会、公正取引委員会に相当)は、2014年4月3日公処字第103040号処分書において、百貨店を経営するA社が開催した開店3周年記念の抽選について、その最高賞の景品額が不当であり、公平交易法(公取法)第19条第3項に違反するとして、当該行為を停止させ、かつ5万台湾元の過料を決定した。
本件の概要は以下の通りである。
A社は、12年の開店3周年記念のキャンペーン期間中に、販売促進の一環として、メンバーズカードの所有者に対して、6,000元以上の買い物をすれば、最高で400万元を超える商品が当たる抽選ができるイベントを開催したが、この最高賞が高額な景品による利益誘引に該当するかどうか、公平会が調査を行った。
公平会によるA社に対する上記の処分理由の概要は以下の通りである。
1)公取法第19条3項によれば、事業者(会社等)は、脅迫、利益誘引または他の不正当方法により、競争相手の取引相手と自らを取引させる行為について、当該行為が競争を制限または公平競争を妨害する恐れがある場合、当該行為を行ってはならないとされている。
競争相手への悪影響指摘
2)景品の販売促進額案件に対する処理原則によれば、抽選の最高賞の金額が、労働部により公表された毎月の平均基本給与の120倍を超える場合には、公取法第19条3項の「利益誘引」に該当し、同項に違反するとされている。
A社が上記の抽選を行った当時の、労働部により公表された毎月の平均基本給与の120倍は225万3,600元であったことから、当該抽選の最高賞の金額は、景品の販売促進額案件に対する処理原則における基準を超えていた。
3)A社が行った「6,000元以上の買物をすれば、最高で400万元を超える商品が当たる抽選をできる」という宣伝は、容易に消費者に対する利益誘引を生じさせる。しかも例えば、消費者が1万2,000元の買い物をすれば、2枚の抽選券がもらえる。そのため、買い物の金額が高ければ高いほど、最高賞に当たる機会が大きくなっていく。このような条件は、消費者がA社の競争相手(他の百貨店)ではなく、A社と取引を行うことを容易にさせ、競争相手の取引機会に悪影響をもたらす可能性がある。
4)A社は、上記抽選の対象はメンバーズカードを持っている顧客に限られるため、一般の消費者に対する誘引ではないと主張したが、抽選の当日に直ちにメンバーズカードを保有することが可能であることから、そのような主張に説得力はない。
公取法19条違反と認定
5)以上のように、開店3周年記念の抽選における最高賞の景品の賞金額が法定の基準を超えたA社の行為は、まさに利益誘引により競争相手の取引相手(消費者)を自ら(A社)と取引させる行為であることから、競争の制限または公平競争の妨害のおそれがある。従って、A社の行為は公取法第19条3項に違反すると判断せざるを得ず、当該行為を停止させ、かつ5万元の過料に処する。
百貨店の開店記念のキャンペーンのほか、百貨店業者以外の各種業者においても、常に激しい競争のため、上記事例のような高額の景品が当たる抽選を行うこともよく見受けられるが、景品価値が高額な場合、公取法第19条3項の不公平競争方法に該当する可能性があるので、注意が必要である。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。
コラム執筆者
黒田法律事務所 尾上由紀弁護士
早稲田大学法学部卒業。2007年黒田法律事務所に入所後、企業買収、資本・業務提携に関する業務、海外取引に関する業務、労務等の一般企業法務を中心として、幅広い案件を手掛ける。主な取扱案件には、海外メーカーによる日本メーカーの買収案件、日本の情報通信会社による海外の情報通信会社への投資案件、国内企業の買収案件等がある。台湾案件についても多くの実務経験を持ち、日本企業と台湾企業間の買収、資本・業務提携等の案件で、日本企業のアドバイザー、代理人として携わった。クライアントへ最良のサービスを提供するため、これらの業務だけでなく他の分野の業務にも積極的に取り組むべく、日々研鑽を積んでいる。
黒田法律事務所・黒田特許事務所
1995年に設立、現在日本、台湾、中国の3カ所に拠点を持ち、中国法務に強い。 現在、13名の弁護士、6名の中国弁護士、2名の台湾弁護士、1名の米国弁護士及び代表弁護士を含む2名の弁理士が在籍しており、執務体制も厚い。
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尾上由紀弁護士
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