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第51回 労働者の「試用期間」について


ニュース 法律 作成日:2014年5月26日_記事番号:T00050528

知っておこう台湾法

第51回 労働者の「試用期間」について

 いわゆる「試用期間」について、台湾では特定の法律上の定義が存在しない。一般的には、会社が新入従業員を雇用した後の一定期間において、当該新入従業員が適任であるか否かを観察することをもって、試用期間の満了後、当該従業員が適任であると会社が判断した場合は留任させ、反対に適任ではないと判断した場合は解雇することを指す。

 台湾法においては、試用期間の設置を特別に禁止または制限する規定がないため、実務上、使用者と労働者との間で雇用契約において試用期間についての約定を追加するという状況が一般的である。試用期間の長さについては、労働基準法の施行細則第6条に「試用期間は40日間を超えてはならない」ともともと規定されていたが、当該規定は1997年6月12日に削除されたため、現在、試用期間の長さは使用者と労働者との間で自由に約定することができる。実務上、試用期間は、通常1カ月間から6カ月間の間であり、3カ月間が最も普及している。

解雇の負担を軽減

 試用期間が満了し、使用者が新入従業員のパフォーマンスに満足できない場合は、無条件に雇用契約を終了させることはできるのか?

 これについて、労働部97年9月3日(86)台労資二字第035588号通達には「労使双方は業務の特性に基づき、契約の信義誠実の原則に違反しないことを原則として、合理的な試用期間を自由に約定することは、法により容認されるものである。しかしながら当該試用期間中または期間満了時点において、使用者が労働契約を終了したい場合は、なお労働基準法第11条(予告解雇の条件)、第12条(無予告解雇の条件)、第16条(解雇の予告時期)および第17条(解雇手当)などの関連規定に基づいて手続きしなければならない」と規定されている。労働部の上述の解釈によれば、試用期間が満了したが期待していたパフォーマンスに及ばない場合の雇用者による労働者の解雇は、一般の労働者に対するものと同じようである。

 これについて、台湾高等裁判所は14年4月29日付の13年度労上字第82号の民事判決において「試用期間の意図は、使用者による比較的大きな労働者解雇の権利を留保させ、かつ使用者による当該解雇事由の証明義務を軽減させることにある」とさらに指摘している。言い換えると、裁判所の見解によれば、使用者は試用期間が満了したがパフォーマンス上、不合格である労働者に対して、なお労働基準法の関連規定に基づかなければ労働者を解雇することができないが、解雇の事由(例えば、労働者が適任であるか否か、労働者が就業規則などに違反したか否かなど)についての立証責任は軽減されるということになり、裁判所も使用者の判断を尊重する傾向にある。

 実務上、新入従業員の実際の業務能力がその学歴などの履歴書に記載される内容と合致しないという状況はよく生じる。外国企業が新入従業員を採用する際は、適任でない従業員を解雇させる時の難易度を下げるため、雇用契約において一定期間の試用期間を約定することをお勧めする。 

黒田法律事務所・黒田特許事務所

1995年に設立、現在日本、台湾、中国の3カ所に拠点を持ち、中国法務に強い。 現在、13名の弁護士、6名の中国弁護士、2名の台湾弁護士、1名の米国弁護士及び代表弁護士を含む2名の弁理士が在籍しており、執務体制も厚い。
http://www.kuroda-law.gr.jp/ja/tw/

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蘇逸修弁護士

蘇逸修弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、法務部調査局に入局。板橋地方検察署で、検事として犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などの業務を歴任。2011年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

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