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記事番号:T00054083
2014年11月28日15:32

  先週22日台北市で、国民党の連勝文候補が市長選挙前の最大イベントと位置付ける支持デモと集会があった。デモの参加者は公営企業や地域組織への動員でざっと2万〜3万人といったところで、相変わらずの高い動員力を見せた。しかし、総統府前の集会場に足を運んで驚いた。開始から1時間以上たっていたのに、前部を除いて空席が目立つ。特に後ろの方は空席だらけだった。連候補の集会には、動員以外で自発的に来場する支持者がほぼいないのだ。空席はやがて到着したデモ参加者らによって埋められていった。まさに国民党のコアな支持者のためだけのイベントだった。


国民党の台北市長候補の投票日1週間前の大型集会で、こうも空席が目立つことがあっただろうか(YSN)

 集会で連候補は、悪質極まる手段で攻撃され、インターネット上でもいじめに遭っていると涙にむせび、言葉を詰まらせた。コアな支持者の集会だけあって、筆者の周囲の人々もそれを見て涙を浮かべていた。しかし、投票日1週間前の集会で、例えば台北市政をどうしたいとか、もっと他に言うことはないのか?だが、連候補はこのような話題が実に多いのだ。

 なぜならば連候補には、政策をまともに語る能力に欠けていると思われるからだ。今月11日、連候補は国民党寄りのケーブルテレビ局の、元国民党立法委員が司会者を務める政治討論番組に出演した。その際、司会者とのやりとりはこんな調子だった。

テレビ出演で失態

司会者:「中韓自由貿易協定(FTA)が結ばれることになりましたが、台北市への影響は?」

連候補:「FTAの台湾への影響は全面的だが、台北市にそれほど多くの製造業はなく、急な影響は見えない」

司会者:「では最終的な影響はどうなりますか?直接の影響は何でしょう?」

連候補:「韓国製品は大陸(中国)で既にある程度重要だ。例えば百貨店あるいは販売店で、食べるもの飲むもの使うもの、既に台湾を超えている」

司会者:「あなたが当選すれば、柯文哲候補が当選した場合とどのような違いがあるのでしょうか?」

連候補:「今日われわれは国際化を歩んでいる。国際化とは2つのことをやるだけではない。例えば設計者、あるいはユニバーシアード(筆者注・台北市で2017年に開催)。この2つは重要だが唯一ではない。最も重要なのは、国際化の過程を通して、いかに住民により多くの機会を創造するかだ」

 果たして視聴者は、連候補が何を言いたいのか理解できただろうか。質問と答えは全くかみ合わず、司会者はやむなく番組をCMに切り替えた。連候補は米コロンビア大学で法学修士を取得し、郝龍斌台北市長に悠遊カード公司の董事長に任じられた際には同社を黒字転換させた「経済通」で、「国際派」を自任して泛緑(汎民進党陣営)の「閉鎖性」を批判し、地方選挙でありながらFTAの重要性を訴えていたはずではなかったか。いくら何でもこんな内容ではひど過ぎる。

 番組側には連候補に政策や抱負を堂々と語ってもらい、劣勢が伝えられる情勢の挽回を図る狙いがあったはずだが、逆に連候補の能力のなさをさらけ出してしまった。

連候補への評価が焦点

 連候補の選挙戦が柯候補へのネガティブキャンペーンばかりなのは、このことと無関係であるわけがない。すなわち、まともに政策で争った場合、悲惨な状況に陥るのが容易に想像できるのだ。与党を代表して台北市長に立候補するに足る器量かどうかは、多くの有権者が疑問に思っていることだろう。


連候補は27日、台北市全域で投票を呼び掛けて回った(中央社)

 それでも台北市は国民党の金城湯池で、市長選挙は4連勝中、しかも02年以降の3回は圧勝している。有権者層の構成上、今回の市長選も柯候補の人物・政策がいかに判断されるかというよりは、連候補にどのような評価が下るのかが焦点だ。「青(国民党)か緑(民進党)かからの脱却」を訴える柯候補は若者を中心に大きな共感を巻き起こしているが、それは対抗馬が連候補だからであり、朱立倫市長(国民党)が人気の隣の新北市ではそんな声は全く聞かれない。

 連候補は、市長は国民党である方が中央政府との関係が安定し、新北市との政策協力もうまくいくと訴える。しかし、父親の七光りで候補者になり、注目度の高い経済問題すら明瞭に話せない人物を重要なポストに押し上げるのは、既得権を享受する特権階級王国、いわゆる「天龍国」を強化するという側面が見逃せない。台北市ではきょうも若者が高過ぎる地価と低い賃金への不満を胸に黙々と働いている。市民が最も解決を望むこの問題の改善に真剣に取り組めるのは、天龍国の住民である連候補ではあるまい。

 柯候補が優勢のもようだが、選挙結果はふたを開けるまで分からない。ただ、柯候補が勝利した場合、ここ十数年続いてきた「青か緑か」の闘争から、台湾政治を一段成熟した段階へ導く契機となり得るため、その実現を期待せずにはおれない。

ワイズニュース編集長 吉川直矢 


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