第27回 柯文哲市長、滑り出しは上々


2015年2月6日15:59  ニュース

第27回 柯文哲市長、滑り出しは上々

記事番号:T00055338

 柯文哲台北市長は就任から40日がたったが、柯市長関連のニュースは相変わらず大手紙の1面を飾ることが多く、めっきり報道の減った馬英九総統と比べると、最近はどちらが総統なのか分からないほどだ。


あまりにも従来の政治家とは異なるがゆえに、柯市長への期待は殊のほか大きい(中央社)

 大手ケーブルテレビ局、TVBSが3日発表した新首長の施政満足度調査によると、柯市長は68%で、陳菊高雄市長と並んで最も高くなった。「今後の施政に期待する」は70%(しない15%)、「好き」は63%(嫌い18%)と、柯市政の滑り出しは現時点でかなり好意的な評価を得ていることが分かる。

 柯市長は先月末、米外交専門誌「フォーリン・ポリシー」のインタビューで、「台湾、シンガポール、香港、中国のうち、植民地統治を受けた期間が長いほど高級だ」という発言をしたことが明らかとなった。当然、問題発言との指摘が出たが、発言の内容以上に問題なのは、柯市長は当初「英文の翻訳の間違いで誤解が生じた」と弁解していたのに、後にインタビューは中国語で受けていたのが分かったことだった。つまり「翻訳の問題」はうそだったのだ。柯市長の失言は選挙期間中からたびたびあったが、市長が公然とうそを言うのは次元の異なる問題で、本来は非難されても仕方がないはずだった。

 ところが、柯市長批判は盛り上がらない。国民党寄りの聯合報、中国時報は発言内容そのものが気に障り、さて鬼の首を取ってやれと連日批判報道を大々的に展開したが、世論がまるでついていかない。ここに今の柯市長の強みを見ることができる。

青緑対立の不毛さ浮き彫りに

 これまでにも書いてきたとおり、柯市長は、政党の支持を受けない無所属候補が、国民党の絶対的な地盤と考えられてきた台北市で国民党候補を1対1の戦いで破った初のケースだ。しかも圧倒的な票差で勝った驚きの結果によって、統一・独立のイデオロギーや歴史観で政敵を糾弾する台湾政界の毎度の光景に、実は飽き飽きしていたことに多くの市民が気付かされてしまったのだ。この空気の前には、従来の青緑対立(国民党対民進党)の手法で柯市長を非難したところで、「またか」とうんざりされるだけだ。

 もう一つの強みは、柯市長個人の欲が見えないことだ。政治家は普通、より高い権力を持ちたい、そのためには党内でより強い地位を占めたいといった欲望を持っている。有権者の歓心を買おうともするのもそれと密接に結び付いている。ところが柯市長は任期中は無所属のままと宣言、党派の中で権力を求めないことを明確にした。しかも自身を「酷吏」と呼んでおり、それは市民にこびない姿勢の表明とも受け取れる。それゆえ、市民のための市政に専念するという言葉により説得力が感じられ、市内の大型建設プロジェクトの不正の有無にメスを入れるという就任最初の仕事が新鮮味を感じさせたこともあり、依然期待感に後押しされている。

関心は実績面へ

 ただ、市民が求めるのは結局は行政首長としての実績だ。廉政透明委員会を立ち上げた以上、大型建設プロジェクトに対する問題点洗い出しでは一定の成果が求められる。さらには、例えば遠雄企業団(ファーグローリー)と矛を交えている台北文化体育園区(台北ドーム)の問題では、不正摘発はもちろん歓迎されるところだが、より重要なのは利用しやすいドーム施設が完成することだ。環境保護団体に配慮して、ドームと国父紀念館を結ぶ地下連絡通路は設計を修正することになったが、不測の事態が起きた際の避難ルートとしての機能は本当に低下しないのか。周辺の渋滞問題は解決できるのか。柯市政が見直しを進めた結果、かえって思わしくない状況が生じるならば、期待感は失望に変わってしまうことだろう。今は多くの市民が柯市政を「お手並み拝見」といった目で見ているが、今後は社会住宅の5万戸供給といった公約を推進できるかなど、実績面が注視されていくことになるだろう。

言葉遣いに課題

 ところで、柯市長にとって一つの課題は言葉遣いだろう。「植民地高級論」が語られたインタビューでは、「台湾が話し合うべきなのは一国二制度ではなく二国一制度だ」という発言も行った。これを受けて中国・人民日報の国際版「環球時報」は、台北と上海が行っている都市フォーラムの中止や、2017年の台北ユニバーシアードのボイコットも検討すべきと書き立てた。柯市長は失言をしたわけではないが、もう少し慎重な言い回しでもよかったのではないか。せっかくイデオロギー論争を避けるスタンスが認められているのに、無用な争議に巻き込まれて足を引っ張られないかが心配だ。 

ワイズニュース編集長 吉川直矢


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