第34回 米台軍事接近と蔡英文訪米


2015年6月26日15:42  ニュース

第34回 米台軍事接近と蔡英文訪米

記事番号:T00057762

 最近、台湾と米国の軍事関係緊密化のニュースが相次いで伝えられている。

 5月27日、ハワイの真珠湾で行われた米国太平洋軍の司令官交代式に台湾軍の厳徳発参謀総長と李喜明海軍司令官が参加し、これを米国在台協会(AIT)が公式フェイスブックページで公表した。米側が台湾軍高官の式典参加を公にしたのは初めてのことだった。

 米国はハワイを拠点とする第25航空連隊と、台湾の陸軍航空601旅団の姉妹関係締結も決めた。1979年の米台断交以降で初のケースで、年内に合同演習実施も計画している。

 これに先立つ昨年11月、米軍の第7心理作戦群と台湾の政治作戦総隊心理大隊との間で協力協定が結ばれ、台湾が中国からの武力攻撃によって通信網を遮断された場合、米軍がネットワークを提供することが盛り込まれた。双方は合同演習を含む中長期の交流計画も視野に入れている。また、今年4月には、沖縄からフィリピンを目指していた米海軍の戦闘攻撃機2機が台南空軍基地に緊急着陸するという異例の出来事もあった。

 こうした米台の軍事面での緊密化は、米軍再駐留に向けた昨年の米比間の新軍事協定締結や、日米同盟強化と同様、中国の海洋進出への対応の一環だ。中国が南シナ海の岩礁を埋め立て、力によって現状を変更する挙に出たことが米台の距離を近付けている。

北京に厚遇見せ付ける

 政治面でこれを反映したのが、蔡英文民進党主席の今月上旬の訪米だった。蔡主席は前回総統選では米国から冷淡な扱いを受けたことが敗因の一つとなっただけに、今回はどのように対応されるのか注目されたが、結果は台湾の総統選候補に対する過去最高の厚遇だった。メディロス国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長やブリンケン国務省副長官ら最高クラスの高官の他、米軍の基地政策に大きな影響力を持つ上院軍事委員会のマケイン委員長らと相次いで会談をこなし、マケイン委員長からは、多国間軍事演習への台湾の参加を推進する意向も示された。

 米国には、北京にプレッシャーをかける意図があったと考えられる。蔡主席は対中政策「現状維持」の方法論を示していないため、前回同様に空疎との批判を受ける余地があった。だが、そうした展開にならなかったのは、この4年間で米中間の摩擦が高まり、中国との関係後退が予想される民進党政権は、米国の当面の利益と合致すると捉えられているためだろう。


米誌『タイム』のインタビューを受けた目的について問われた蔡主席は、「台湾が民主主義を守る価値を表明したかった」と説明した(中央社)

 陳水扁政権は独立志向が台湾海峡の現状変更推進と受け取られ、米台関係を険悪な状況に追いやった。蔡主席は陳前総統と自身は異なると表明しており、これは「台湾海峡の現状を維持し予測不能な動きは取らない」ということを意味し、米国に安心感を与えたとみられる。

 米側には、前回総統選で馬英九総統に肩入れして公平さを損ねたことへの反省もあるようで、アーミテージ元国務副長官らからは、今回は米国が影響を与えるようなことは避けたいとの意見も表明された。米国の一連の動きからは、民進党への政権交代への許容度が高まったことが見て取れる。当然、蔡主席にとって有利なポイントになるだろう。

ワイズニュース編集長 吉川直矢

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