第188回 食品安全衛生案件の処罰について


ニュース 法律 2015年9月23日

産業時事の法律講座

第188回 食品安全衛生案件の処罰について

記事番号:T00059454

 台中市衛生局は、2013年10月に福懋油脂(以下「福懋」)の製造したオリーブオイル6点のサンプルを衛生福利部食品薬物管理署(TFDA)に送り、抜き打ち検査を行いました。その結果、包装に「100%オリーブオイル」または「天然オリーブオイル」との表示があった6点全てに、オリーブオイルの半分のコストで済む菜種油が、かなりの割合で混ぜられていたことが分かりました。

 台中市衛生局は、福懋は13年の食品衛生管理法における「不実表示」の規定に違反していると判断、製品1点につき200万台湾元、6点で計1,200万元の過料を科しました。また、福懋は検査を受ける際、3回にわたって「査察・検査を回避または妨害する行為」を行い、かつ衛生局に対して「不実な資料」を提供したとして300万元の過料を科しました。

 さらに、衛生局は福懋が当該商品について偽装を行ったとして、同商品の製造・販売停止の他、13年11月8日までに全品回収することを命じました。

 福懋はこれらの処分を不服とし、訴願を提起しましたが棄却されたため、過料部分についてのみ行政訴訟を提起しました。福懋の起訴理由は以下の通りです。

一つの罪で2つの処罰は妥当?

1)福懋の行為は、刑法と行政法に抵触しているため、より重い罰則である刑事罰のみを科すべきで、行政罰を同時に科す必要はない。

2)オリーブオイルに菜種油を混ぜることは、消費者の健康に対して何らの危害を与えるものではないため、衛生局の科した1,200万元の過料は重過ぎる。

3)福懋による「不実な資料」の提供は「査察・検査を回避または妨害する行為」には当たらない。

 台中高等行政裁判所は15年2月に、1,200万元の過料は維持、300万元の過料については取り消す判決を下しました。理由は以下の通りです。

1)台中地方法院検察署は、07年1月からオリーブオイルに菜種油を混入した商品を純粋なオリーブオイルと表示し販売したことは、詐欺罪および偽装した罪に当たるとして福懋の経営責任者および社員を起訴したが、会社を起訴したものではないため、衛生局は「一罪両罰(一つの罪で2つの処罰)」という判断をしたことにはならない。

2)このような罰則は威嚇効果を狙ったもので、違法行為が社会に与える影響、違法行為で得た利益、過料の金額が被告の財力と照らし合わせて適当かどうかなどを考慮して、警告としての効果が期待でき、同じ過ちを起こさせないと判断した場合に科せられる。福懋は食の安全を脅かし、合法な業者の権益を損ねた。また、豊富な資金を持っていながら違法行為で多額の利益を得ており、1,200万元の過料は相当である。

3)衛生局によると、福懋は「査察・検査を回避または妨害する行為」と「不実な資料の提供」を同時に行ったため、300万元の過料が科された。しかし、福懋は「不実な資料の提供」こそ行ったが、「査察・検査を回避または妨害する行為」はしていないため、衛生局が最高額の過料罰を科したことは違法である。

 福懋はその後本案を最高行政裁判所に上告しましたが、最高行政裁は15年7月に上告を棄却しました。裁判所は判決の中で、上告人の「偽装」(刑事罰)と「不実表示」(行政罰)では2つの行為が認められるため、別途処罰されるべきであると判断しました。

 今回の判決からは以下のことが分かります。

検挙率が低い現状

1)最高行政裁は、「偽装」と「不実表示」を2つの異なる違法行為と認定しました。このことは今後も発生するであろう食の安全に関する事件の際に2つの処罰を科すことができる根拠となるでしょう。しかし、もし福懋が商品の包装に「菜種油20%入り」と表示していたとしたら、「不実表示」は成立しないことになります。ではこの場合、「偽装」は成立するのでしょうか?刑事罰は受けるのでしょうか?もし構成しない場合、それでも両者は「2つの行為」といえるのでしょうか?

2)食品衛生法が禁止している「査察・検査を回避または妨害する行為」および「不実な資料の提供」とは、業者が協力を拒否して、関係機関が査察を行えない状況を指しています。もし査察を行うことができるのであれば、その査察の結果に対して処罰を下すことになります。

3)衛生局と行政裁が今回認定した「偽装」と「不実表示」は、どちらも07年から始まった行為です。食品衛生法の規定によると、政府には「製造、加工、調合、包装、運送、貯蔵、販売を行う場所に立ち入り、現地査察およびサンプル検査」を行う権力がありますが、07年から13年にかけて違法行為はほとんど検挙できていません。また、査察を担う公務員に対する司法機関による調査も行われていません。食の安全の問題を考える上で、最も検討が必要なのはこの点でしょう。

徐宏昇弁護士事務所
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