第192回 アダルトDVDの著作権性


ニュース 法律 2015年11月25日

産業時事の法律講座

第192回 アダルトDVDの著作権性

記事番号:T00060575

 2015年10月、知的財産裁判所は、14年2月の判決に続き、アダルトDVD(AV)は著作権法の保護対象たる著作物であるとする旨の判決を下しました。

 本件は14年7月に発生した案件です。警察は、被告人が台北市内で経営していたアダルトグッズやモザイク入りのアダルトDVDなどの販売店「成人の国」を告発・捜査した際、7,872枚の違法にコピーされたアダルトDVDを差し押さえました。これらアダルトDVDの中には、映画会社を販売元とするものが含まれていたため、日本企業3社が著作権者として被告人を告訴しました。

 これに対して被告人側は、▽過去に無修正のアダルトDVDを販売した際にわいせつ物散布の罪で有罪判決を受けている▽その際にアダルトDVDは著作権法の保護を受けないと、裁判所が判断していることを知った▽そのため、現在では、わいせつ物とはならないモザイク入りのアダルトDVDの販売に切り替えた▽つまり、犯罪に対する故意はない──と抗弁しました。

モザイク入りなら犯罪でない?

 士林地方裁判所は15年5月の判決の中で以下のように判断しました。

 被告人の販売するDVDの「製作には専門家集団による総合的な企画が不可欠で、それは劇の構想編集から始まり、さまざまな内容のプロットや文書の作成、具体的なシナリオ作成とセリフの編集、さらには監督による役者の演技指導や演出、専門カメラマンによる撮影や撮影後の編集作業、はては販売広告、マーケティングまで、多くの時間と費用、人力が費やされて初めて完成するものであり、創作性のある人類の精神上の創作であり、制作集団の個性と独創性を十分に表現している」。

 また、「DVDの内容はどれも、いわゆるアダルト映像であるが、それらの内容には暴力、性的虐待または獣姦など、芸術的・医学的・教育的な価値のないわいせつな内容が含まれているわけではない。さらにそれらDVDの内容は、日本国における関連倫理審査団体による審査基準による審査を受けており、また特定部分にはモザイク処理がなされている」ため、日本国における倫理道徳規範と検査基準に符合したものとなっている。これらのことから、それらアダルト映像は著作権法の保護を受け、被告人の行為は、著作財産権を侵害するDVDの散布罪を構成する。

著作権があるとの判断を維持

 士林地方裁判所のこのような判断に対して、検察、被告人共に控訴しましたが、知的財産裁判所は、アダルトDVDに著作権が認められるとの判断を維持、以下のように説明を加えました。

1)差し押さえられたDVDに含まれるアダルト映像は、言論表現・データの流通と関連している。「各国における性道徳感情と、社会風紀の認知・感受性は、社会・経済・文化・集団・風俗などの発展の違いにより、それぞれ異なるものであり、また、個人の性格観念、育った環境、家庭の背景、学習経験などとも密接な関わりがある。わが国は、TRIPS(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)などの国際的規約を順守し、それらの会員国国民の著作を保護すべきであり、わが国の善良なる風俗の基準のみを下に、日本のアダルト映像がわが国において著作権法の保護を受けないと判断すべきではない」。アダルト映像にはストーリー性があり、またその撮影手段、情景の設計などには、作者の個性や独創性が十分に表現されている。それは一般的な視聴著作の「創作性」となんら異なるものではないため、著作権法の保護を受ける視聴著作であると認めることができるというべきである。

2)知的財産裁判所が、14年2月にアダルト映像に著作権があると認めるまで、最高裁判所は一貫して、それら著作権法における著作物ではないため、著作権法の保護を受けないと判断してきた。そのため、被告人が14年2月下旬以前において、日本のアダルト映像著作がわが国の著作権法の保護を受けるという事実を正確に認識することは難しく、「行為者が主観的に法律を正しく認識している可能性を求めることも難しい」ため、被告人の14年2月下旬以前における行為は、違法性に対する認識が欠如していることから、犯罪は成立し得ない。

3)被告人の14年2月下旬以降の行為については、その「違法性に対する錯誤は、不可避といえる程度のものではない」が、最高裁判所が過去それらを著作権法における著作と判断してこなかったこと、また、被告人がわいせつ物を販売した行為に対して、裁判所が著作財産権の侵害を認めてこなかったことなどに鑑みると、被告人の著作権侵害行為は、「通常の違法性の認識と比べ、非難性が低い」というべきであり、減刑を行うべきものである。

基準はどこに

 本件判決は、知的財産裁判所第3法廷が下した判断ですが、結果として14年に第2法廷が下した判断を支持した形になりました。このことからも、知的財産裁判所は、アダルト映像は著作権を持つという立場を支持していることが見て取れます。しかし、以下の点で問題がないわけではありません。

1)14年の判決では、「公共の秩序」、「善良な風俗」と、著作権保護の関係を直接否定し、憲法における言論の自由の規定を理論的な基礎としていましたが、今回の判決では、「台湾はTRIPSなどの国際的保護規約を順守すべき」という観点から出発し、「わが国の善良なる風俗の基準のみをもとに、日本のアダルト映像がわが国において著作権法の保護を受けないと判断すべきではない」と結論付けたが、このような立論方法は、論拠としては薄弱と言わなければならないものである。

2)14年の判決では、日本ではアダルト映像が著作権法の保護を受けているため、アダルト映像産業が栄えた。わが国もそれら日本の著作を保護することで、関連産業の発展を望むことができるとしていたが、今回の判決では、差し押さえられたアダルト映像に、暴力、性的虐待または獣姦など、「芸術的・医学的・教育的な価値のないわいせつな内容が含まれている」かどうかという点に注目して、著作権による保護に関して、それとは全く無関係な審査基準を設けた。

 このように、台湾における法の発展の過程においては、進歩と保守の争いが目に見て取れる場合があり、このことからも、この問題に関しては、各界ともにこれからも一層の努力が必要なことが分かります。

徐宏昇弁護士事務所
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