第197回 「条件付き承認」の環境影響評価


ニュース 法律 2016年2月24日

産業時事の法律講座

第197回 「条件付き承認」の環境影響評価

記事番号:T00062134

 2014年8月21日、高雄市政府は「茄萣区1〜4号道路計画」環境影響評価審査の結論を「条件付き承認」と発表しました。しかし、地元住民はこの結論に猛反発、行政訴訟を提起しました。16年1月19日、高雄高等行政裁判所はこの環境影響評価審査の結論を取り消す判決を下し、高雄市政府に再審査を命じました。

 「茄萣区1〜4号道路計画」とは、「国家重要湿地」を横断する道路を設ける計画ですが、同湿地は毎年、1級保護鳥類である「ハヤブサ」「クロツラヘラサギ」「シマアジ」「アカハラダカ」など1万羽に及ぶ水鳥の越冬地となっています。もしここに道路をつくれば、その道路の両脇は財団によって買収され、商業開発されることは間違いなく、影響は「道路だけ」にとどまるわけがありません。

 高雄高等行政裁判所は判決の中で、▽高雄市政府の環境評議会は同環境影響評価審査の結論を作成する際、会議記録には記録のある「茄定湿地保育利用計画」を実際には作成せずに、直接「条件付き承認」との結論を下した▽これは明らかに環境影響評価プロセスの規定に違反する▽高雄市政府はその後も環境評価委員の要求に従った保育計画を提出していない──などと認定しました。

実際は「無条件承認」

 台湾では、中央政府から地方自治体まで、重要な計画に関する決定を「委員会」が行うことが慣習となっています。委員会の委員には、当局の息のかかっていない学者や専門家が選出されることもありますが、通常は政府が指定する人選です。そのため、委員会で話がまとまらない場合、とりあえず、主席の意向に従う形で「条件付き承認」という結論を出します。そうしておいて、その後、実際には条件が履行されなかったとしても問題とはせず、結果としては事実上の「無条件承認」となる場合がほとんどです。

 このように、少数の人により公共政策の方向性が決定されてしまう状況において、最も大きな影響を受けるのは地元住民です。これまで彼らは、陳情、抗議、デモなどを行う以外にどうしようもありませんでしたが、司法院大法官会議が98年の469号解釈で「新保護規範理論」を採用して以降、状況は改善されたといっていいでしょう。

住民に環境評価取り消し訴訟資格

 雲林県政府は、01年5月にごみ焼却場建設計画環境影響評価の結論を発表しましたが、地元住民は行政訴訟によりその撤回を求めました。高雄高等行政裁判所は05年5月に「事実を尊重する」ことを理由に、原告の訴えを退け、同環境影響評価の結論が「条件付き承認」であることのみを違法と判決しました。双方上告後、最高行政裁判所は「地元住民には環境影響評価の結論の取り消しを求める権利がある」とした上で、前述の469号解釈を以下のように引用しました。

 法律が、特定の人物が権利を享受する、または法律上の条件を満たした特定可能な人物が行政または国家機関に対して一定の作為を請求できると規定している場合、その規範の目的は、個人の権益の保護にある。

 法律が、公共の利益または一般国民の福祉のために規定を設けている場合であっても、法律の全体的な構造、適用の対象、予定されている規範的効果、および社会発展などの要素を総合的に判断した際に、その規定の趣旨が特定の個人の保護にあると判断される場合、法に基づいた救済を受けることができると解すべきである。

 高雄高等裁判所は、08年11月に「茄萣区1〜4号道路計画」の環境影響評価を取り消す判決を下し、その後、最高行政裁判所も10年7月に県政府の上告を棄却、判決は確定しました。

 その後も同様の判断は続きます。まず、08年8月に台北市が士林区の市街地再計画について行った環境影響評価に対して、公益団体と地元住民が行政訴訟を提起した事案では、台北高等行政裁判所は原告らには起訴を行う資格がないとして訴えを退けましたが、その後の最高行政裁判所の11年9月15日の判決は、環境影響評価法における環境影響評価に関する規定は、一種の「保護規範」であると判断した上で、「同保護規範の保護範囲にある人民とは、開発行為が行われる地元の住民のことであり、その権利または法律上の利益が侵害される可能性がある以上、取り消し訴訟の原告となる資格を有している」としました。

 次に、11年7月に新北市政府が行った「淡水河北側沿河快速道路」計画の環境影響評価についても、地元住民が行政訴訟を提起し勝訴しています。最高行政裁判所は、▽開発行為の影響を受ける範囲の「地元住民」は、環境影響評価の結論に対して取り消し訴訟を提起することができる▽当時の「環境影響評価作業規則」の規範によると、「開発行為の影響が及ぶ範囲は、開発行為から半径10キロメートルの範囲内、線状の開発行為の場合はその線の両側各500メートルの範囲内」となっていた──などと判断しました。

「法的保護対象で被害可能性あり」

 このような流れの中で、今回の茄定道路開発計画に関する高雄高等裁判所の判断は、原告の資格に関しては、以下のような説明をしただけでした。

 「利害関係」とは「法律上の利害関係」を指しており、「新保護規範理論」は「利害関係のある第三者」の範囲を判断するための基準である。

 「新保護規範理論」により、法律により保護されるべき対象であることを判断され、かつ利害関係のある第三者の陳述した事実により、その権利または利益が損害を受ける可能性がある場合、(中略)取り消し訴訟を提起することが(中略)できる。

徐宏昇弁護士事務所
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