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記事番号:T00063165
2016年3月23日16:02

 2014年4月にドイツのハノーバーで行われた展覧会で、町洋社のブースが突然、裁判所の仮処分決定書を手にした人たちに囲まれました。もちろん、彼らは商品の説明を聞きにきたわけではありません。裁判所の裁定には、▽町洋がハノーバーの展覧会に出品している製品はドイツでの展示、販売または販売の申し込みができない▽町洋は原告の仮処分費用と損失を賠償すること──と記されていました。

 原告フエニックス・コンタクト社が権利を侵害されたと主張していた製品は、「電子装置ハウス(Elektronik-Gehäuse)」という、工場における自動化装置を収納する電子機器用のプラスチック製の外箱でした。外箱外部にはメーンコンピューター、製造機器や他の電子装置に接続するための接点などが設けられ、また底部には箱をレールに固定するためのクリップがあり、功能の異なる各種電子装置をこの外箱に入れ、レールに固定すれば、外観上は同じ形の外箱が一列に並ぶようになるという趣旨の製品でした。

「消費者が混同する」

 原告は、▽このようなプラスチック製の外箱の設計は原告が初めて採用したものであり、既に長年販売されてきた▽外箱の設計と外箱に使用されている緑色は原告企業のロゴとなっており、原告の優良な信用を表している▽被告は、消費者が原告の製品と勘違いしてしまうほど原告の製品と近似した外箱を販売した──などとして、被告の行為はドイツ不正競争防止法第4条9号の規定「競争他社の製品を不当に模倣することで購入者を欺罔(きもう)、または不当に模倣された商品の信用を利用」に違反すると主張しました。

 被告は以前にも原告から同様の手口で展示会への出品を差し止められていたこともあり、今回の仮処分には異議を申し出ることにし、双方はデュッセルドルフ地方裁判所で裁判を行うこととなりました。

 15年2月、同裁判所は原告の訴えを認める判断を下しました。その理由は▽被告の製品は外観設計が原告の製品と近似している▽原告の製品は長期にわたり使用されてきたため、その外観は既に原告企業の優良な信用を表している▽被告の製品には被告の企業名が大きく表示されているが、購入者が混同することに変わりはない──というものでした。

 これに対して被告は▽原告製品の設計的要素は、どれも技術設計上のものである▽被告製品と原告製品の設計上の同じ部分は、どれも電子装置の規格上そうでなければならないもので、それは購入者を混同させるものではい──と主張しました。それに対して原告は▽電子装置の設計はまず外箱が存在した上でのメーンボード設計である▽装置の規格は事実上、外箱で決まってしまう▽外箱が電子機器の規格に合わせて設計されるということはない──などと主張しました。

原判決を破棄

 被告の控訴を受けたデュッセルドルフ高等裁判所は、16年2月2日に口頭弁論を開きました。その中で首席裁判官は原告に対し以下のような疑問を投げ掛けました。「外箱の設計が先で、電子装置の設計が後だというのであれば、購入者は自らの電子装置を設計する以前に外箱を詳細に研究・評価するはずであるから、外箱が近似していることから混同することはないのではないか?」

 これに対して原告の弁護士は以下のように答えました。「購入者は自らの製品技術に関する専業知識しかなく、実際に市場にどのような外箱が存在するかに関する知識はない」。その結果、16年3月1日、高等裁判所は地方裁判所の判決を破棄し、原告の訴えを退ける判決を下しました。

「購入者は詳細な研究を行う」

 裁判所は判決の中で「ドイツ連邦最高裁判所の15年の最新の見解によると、この種の製品の外観が混同を招くかどうかについては、『当該領域における一般知識および相当な能力を持ったもの』の判断能力を基準とし判断されなければならない。従って、本案製品のように、その購入者が専門の購入担当者である場合、購入者はその外観設計の近似によって混同されることはない」とした上で、「企業の購入担当者は、製品技術に関する専門知識を持っており、またどのような代替品があるかについても専門知識を備えている。そのため、特定の外箱を採用した結果、自社の製品の設計の変更が容易ではないことは理解しているため、購入時には、詳細な研究・製品テストなどをした上で製品を購入を決定する。そうであるならば、このような専門の購入担当者が、商品の外観設計からその出どころを判断することはない」と判断しました。

 筆者は被告の代理人として原告と交渉を行いました。交渉の際、原告弁護士から「本案の他のメーカーは全て侵害を認め賠償を行っている」との脅しを受けましたが、訴訟を進め勝訴を勝ち取りました。

利用権独占には法的理由必要

 知的財産権の観点からすると、商品の外観設計は、主に意匠登録の保護を受けますが、保護期間を経過した後はパブリックドメインとなり、誰でも利用することができるようになります。そのため、工業的な利用がされるだけの外箱については、通常は意匠登録の保護を受ける価値はありません。もし保護期間を過ぎた後もその外観設計の利用権を独占したいのであれば、それ以上の法律上の正当な理由が必要です。

徐宏昇弁護士事務所
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