第190回 意匠の近似性の判断


ニュース 法律 2015年10月28日

産業時事の法律講座

第190回 意匠の近似性の判断

記事番号:T00060047

 意匠権(設計專利)とは、物品の形状・パターン・色彩など、視覚設計に関して取得することができる特許権のことです。意匠は、視覚設計に係る特許で、技術や科学とは無関係なため、意匠権の侵害に関する判断は、発明特許・実用新案とは異なります。

 意匠権第D130968号「機車(バイク)」の特許権者である光陽工業(KYMCO、以下「光陽」)は、可愛馬科技(LOKOVEI、以下「可愛馬」)社製の電動自転車(型番CHT-008)が当該意匠権を侵害しているとして、可愛馬に対して、▽CHT-008電動自転車を製造販売することの禁止▽侵害物の回収と破棄▽1,490万台湾元の賠償金──を求めて、知的財産裁判所に提訴しました。

 知的財産裁判所第一審は、光陽の全面勝訴の判決を下しました。可愛馬はそれを不服として控訴、光陽側も賠償金を上乗せして控訴を行った結果、知的財産裁判所の第二審判決では、新たに302万元の賠償金を勝ち取ることとなりました。

馬の尻を模した箱

 本件における可愛馬の抗弁は以下のようなものでした。

1)双方の車種は異なる。可愛馬は電動自転車で、光陽のそれはバイクである。製品が異なる以上、一般消費者がそれらを混交することはない。

2)双方の製品は、その外観設計も近似していない。可愛馬の製品は、意匠権第D142397号の外観設計を使用している。また、当該意匠権は、係争意匠権認可後に申請をしたものであるが、知的財産局がそれを認可している以上、両者の設計は近似していない。

3)可愛馬の製品は1頭の馬をイメージしたものである。車体前部は馬の頭、車体部分は馬の体、そして車体後部は馬の臀部(でんぶ)を模した造りとなっている。そのため、電動自転車後部に取り付けられている箱は設計上重要な要素となっているが、第一審において光陽が現場検証をした際には、同箱は取り外されていたため、原審は両者を近似しているものと判断してしまった。

 可愛馬のこのような主張に対して、二審、知的財産裁判所は判決の中で以下のように判断しました。

1)商品の設計概念(1頭の馬の概念)および、消費者がバイクを購入するか、または電動自転車を購入するかを決定する消費行為と、全体の視覚的な特徴が近似しているかどうかの判断とは関係がないものである。

2)電動自転車の後部に箱が取り付けられていたかどうかによって、物品の視覚設計上の比較結果が変わることはない。バイクでも、電動自転車でも、同様にさまざまな設計の箱を後部に取り付けることができるのであるから、その箱の設計が消費者の視覚印象に与える影響はほぼ無い。

 しかし、その後の可愛馬の上告に対して、最高裁判所は以下のような理由から、知的財産裁判所の判決を破棄する判断を下しました。

1)被告の物品と係争意匠権の全体的な視覚性設計が同一または、近似しているかを判断する際には、通常の消費者が商品を選択する際の観点からそれらを比較しなければならず、かつ、意匠の主要部位の設計的特徴を重点として、その他の部分の設計的特徴を総合的に判断しながら、全体的な視覚性設計の統合による視覚的効果を構成しなければならない。その上で、全ての設計的な特徴を比較した後に、総合的な判断を行わなければならない。

2)可愛馬製品のパネルの設計から判断するに、同製品と前述の第D142397号意匠権とは同じものである。また同意匠権は、光陽に特許無効審判を提起されたものの、知的財産局はその訴えを退けていることからも、可愛馬の製品と、係争意匠が近似を構成しないことは明らかである。

3)可愛馬の製品において、後部に取り付けられている箱は、第D142397号意匠権の重要な特徴である。原審は、それを実際に比較することなく、たとえ同箱を取り付けたとしても、判断結果に影響はないと判断したことには問題がある。

 この最高裁判所の判断からも分かる通り、ある物品が意匠権を侵害しているかどうかを判断する鍵は、主要部分の設計的特徴にあります。通常、主要部分の設計的特徴が明らかに異なっていれば、全体的な視覚設計は異なります。

 今回の案件では、光陽が特許を持つバイクには後部に箱は取り付けられていませんでした。可愛馬が言うように、「箱は設計上重要な要素となっている」のかどうかということの真偽には疑いの余地が残っていますが、それにしても、光陽が現場検証の際に箱を取り除いたことは、結果として自らの首を絞め、逆転敗訴となってしまう原因となりました。これは明らかに失策です。

徐宏昇弁護士事務所
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