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記事番号:T00071291
2017年6月23日15:46

 13日、パナマが中国との国交樹立と台湾との断交を発表した。台湾と長く友好関係にあった、パナマ運河を抱える中米のハブ国家で、バチカンと並んで最も関係維持を重視していただけに驚きが大きく、翌日の一般紙は全て一面トップでこのニュースを伝えた。台湾に残された友好国は20カ国に減少した。

/date/2017/06/23/20newscolumn_2.jpg断交によってパナマから17日帰台し、大使館の青天白日満地紅旗を桃園空港で広げた曹立傑大使(右3)ら。断交情報を事前に全くつかめていなかったという(中央社)

 陳水扁政権時代に副総統を務めた呂秀蓮氏は「国際社会で影響力を持つ国は皆台湾と別れてしまう。台湾は亡国を見る」と危機感を示した。承認国が減り続けることで台湾は国際社会で孤立化を深め、存在感がさらに低下するとの認識だ。聯合報は社説で「蔡英文総統の実務的でない両岸(中台)政策が外交関係を失う主因だ」と指摘し、中台関係の改善を求めた。

圧倒的な中国マネー

 パナマのバレラ大統領は今回、中国との国交樹立を「正しい選択」と語った。自由時報の報道によると、中国は過去3年、パナマの港湾、地下鉄などのインフラに計256億米ドルの投資を行い、80億米ドルの借款を供与した一方、台湾は外交部の年間予算自体が240億台湾元(約8億米ドル)規模で、パナマ経済への貢献において全く太刀打ちできないという。

 台湾と外交関係を持つ他の20カ国にとっても、中国の方が経済面ではるかに魅力的であることは同じで、このため台湾は今後、承認国をさらに減らしていく可能性が極めて高い。ちなみに21世紀になってから台湾と断交した国はパナマで13カ国目で、友好国は17年で3分の2以下に減少した。だが、果たしてこれによって台湾の国際的地位が低下したと言えるだろうか?

経済・市民生活に影響なし

 パナマもそうだったが、台湾の友好国はすべて小国ばかりだ。中米や太平洋の島しょ国が中心で、日頃密接な利害関係があるわけではない。断交しても、台湾経済にも市民生活にも何ら影響は出ない。国家承認のために、経済援助によって関係を維持しているにすぎず、しかもそれらの国々は中国との国交樹立に関心を持っているのが現状だ。

 友好国は、世界保健機関(WHO)総会への参加提案や、かつてのような国連への復帰・加盟提案で、台湾の声を代弁してくれる。しかし、中国の反対によって結局実現しないため、実質的な効果がもたらされるとは言い難い。

 アジアで台湾と最も利害関係が一致するのは、同じく中国の覇権主義に対抗する日本だ。その日本は今年、在台窓口機関の名称を「日本台湾交流協会」に変更、台湾側も「台湾日本関係協会」に変更して関係を強化した。米国も先週、「台湾旅行法案(Taiwan Travel Act)」が下院外交委員会のアジア太平洋小委員会を通過した。今後、下院と上院で通過すれば、米台間で高官の相互訪問に道が開かれる。

民主主義に価値

 日本や米国、および西欧諸国は、台湾が開かれた自由民主主義体制であること、地域の平和に貢献する姿勢、活力ある経済、それに安全保障のパートナーであることに価値を見出している。それゆえ、日本も米国も関係を強化しているのであり、承認国の多寡は問題ではない。

 パナマとの断交では「衝撃」との見出しが各紙に踊り、野党寄りのメディアは対中関係の改善の必要性を相次いで指摘した一方、蔡英文総統は「一つの友好国を失ったけれども、台湾の国際社会における価値と地位は変わらない」と強調した。筆者は蔡総統の言うとおりで、実は台湾にとってそれほど大した出来事ではないと考える。

 台湾はもはや友好国との断交を阻止することは困難だ。それを防ぐことに神経をすり減らすよりも、民主主義や人権を充実させ、経済発展を続け、多元的で魅力ある社会を発展させることにより意を注ぐべきだろう。そうである限り、台湾は国際社会で引き続き存在意義を評価され、地位を低下させることはないはずだ。

吉川直矢

吉川直矢

ワイズメディア

東京外国語大学中国語学科卒。大手放送局記者、海外経済情報メディアでの編集長職を経て、07年Y'sニュース創刊に参加、以来編集長を務める。専門分野は台湾政治。
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