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記事番号:T00074643
2017年12月22日15:44

 独立志向の第2野党・時代力量の黄国昌主席の立法委員解職の是非を問う住民投票が16日、黄氏の選挙区である新北市第12選挙区(金山区、万里区、汐止区、平渓区、瑞芳区、双渓区、貢寮区)で行われ、賛成4万8,693票、反対2万1,748票で否決された。台湾の政治史上、立法委員の解職を求める住民投票が行われたのは初めてだったが、投票率は27.75%と低調だった。

/date/2017/12/22/20column_2.jpg応援集会で解職に反対票を投じるよう呼び掛ける黄国昌氏(右5)。投票結果は同党の課題を全て浮き彫りにしたといえる(中央社)

 解職には同選挙区の有権者の4分の1に当たる6万3,888票が必要で、この水準までには24%もの開きがあった。黄氏は同性婚を支持する立場のため、これを問題視した統一志向のキリスト教右派団体、安定力量聯盟が罷免を求め、有権者の署名計2万6,700通を選管に提出して住民投票にこぎ着けていた。最大野党の国民党が解職に賛同したこと、選挙区が汐止区を除いて農業・漁業地域ながら、黄氏が立法院での活動に重点を置いて支持基盤の開拓に注力してこなかったことから、解職が成立する可能性もあるのではないかと結果に注目が集まっていた。

支持率低下と関係

 ただ、投票結果は意外なものではなかった。黄氏は立法院では皆勤賞、最近の慶富造船乱脈融資事件でも不正追及で活躍するなど、立法委員としての活動には評価を受けていた。このため、安定力量は黄氏の罷免理由として「態度が傲慢(ごうまん)」「言行不一致」といった抽象的な批判を並べざるを得なかった。罷免運動は、統一派既成世代が独立派新興世代に仕掛けた闘争に他ならなかった。

 黄氏の日頃の言動に落ち度がなく、同性婚の是非が差し迫ったイシューでなかった以上、黄氏の解職が成立する可能性はもともと低かった。ただ、黄氏は昨年1月に当選した際には8万508票を獲得したものの、今回得られた解職反対票はその27%にとどまった。これは時代力量の支持率低下と直接関係している。

本土派2大政党体制が目標

 若者中心の時代力量は3年前のヒマワリ学生運動の勢いを借り、昨年の立法委員選挙で黄氏を含む5人が当選。一躍第3党となった。しかし、その後は厳しい道のりを歩んでいる。

 同党は国民党に取って代わり、民進党と共に本土派2大政党の政治体制の実現を目指している。民進党と異なる独自性を打ち出すため、国民党の党資産清算といった共通の利害が絡む問題以外では民進党に対決姿勢で臨むことが多い。一例一休(週休2日制)の労働基準法(労基法)改正では一貫して労働者側の立場に立ち、頼清徳行政院長就任後の見直しの動きに対しても、労働者に過労を強いる改悪として激しく反発。立法院では徐永明議員団総召集人が11時間も発言席を占拠して話題になった。

 しかし、労基法改正は中小企業の過半が望んでいることであり、反対は多数民意と相いれない。また、時代力量は同性婚を支持する立場だが、これも主流民意か否かは論議が分かれる。国民党に取って代わることを目指すのであれば、同党の支持者が賛同できるような政策方針を示すべきだろうが、より急進的な立場をとっているため、広汎な民意を獲得できないでいるのだ。

 ここ20年余り、新党、親民党、台湾団結聯盟(台聯)といった小政党は全て勢力拡大に失敗してきた。この事実が時代力量に、埋没を避けるべく、有権者の耳目を引く急進的な主張を展開させているとみられるが、かえって将来を危うくしているように感じる。時代力量は民進党の「独立派・リベラル」に対し、「独立派・中道保守」の方向に進めば新たな市場を開拓できるのではないか。例えば、脱原発では民進党も時代力量も軌を同じくするが、大気汚染問題が深刻化した今、より現実に沿った進め方を主張すれば一定の支持が得られると思うのだ。

党勢拡大に黄信号

 時代力量は民進党との対抗路線を歩んだ結果、民進党は18年の統一地方選では選挙協力を行わない方針を既に明言。これにより、時代力量は早くも党勢拡大に黄信号が灯り始めている。

 台湾社会の根本的な争点が統一・独立で、2大政党体制を生みやすい小選挙区制である以上、双方を代表する大政党以外はどうしても泡沫化しやすい。時代力量も選挙制度のくびきから逃れることは困難なように見受けられるが、今後より主流民意に近づく体質改革を進めて、若者の声を社会改革に反映させることを望みたい。

吉川直矢

吉川直矢

ワイズメディア

東京外国語大学中国語学科卒。大手放送局記者、海外経済情報メディアでの編集長職を経て、07年Y'sニュース創刊に参加、以来編集長を務める。専門分野は台湾政治。
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