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記事番号:T00082977
2019年4月15日15:51

 民進党が総統選候補の選出を巡って大混乱に陥っている。先週10日、党中央執行委員会は、公認候補を決める党内予備選を5月22日以降へと、1カ月延期する異例の決定を行った。同党の総統候補レースでは、再選を目指す蔡英文総統に頼清徳前行政院長が挑戦状をたたき付けている。陳菊総統府秘書長や蘇貞昌行政院長が、副総統候補として蔡氏とペアを組むよう頼氏を説得したものの不調に終わり、執行部は党分裂回避の苦肉の策として日程延期を決め、引き続き「蔡頼ペア」の実現を目指すこととなった。

/date/2019/04/15/20column1_2.jpg蔡氏は、頼氏が立候補を断念しない限り厳しい状況だ(14日=中央社)

 しかし、この決定は民主主義を標榜(ひょうぼう)してきた同党の理念に反するもので、党内の一部から強い反発を受けた。陳水扁政権で国防部長を務めた蔡明憲氏は12日、失望感から離党を表明。動揺の拡大を防ぐべく、頼氏が党員らに決して離党しないよう呼び掛ける事態となった。

 民進党は、総統候補を党員投票すらない市民への電話アンケートのみで決定する。勝てる候補を選ぶための究極の民主主義的手法だが、台湾民意基金会が3月下旬に発表した世論調査によると、総統候補としての支持率は蔡氏26%、頼氏55%と蔡氏は頼氏に大きくリードされている。電話アンケートを行えば、頼氏が総統候補に選ばれることは確実だ。

互いに譲らず

 蔡氏は13日、「執政の価値を実現して台湾を守るため、競争ではなく団結すべきだ」と自身への候補一本化を呼び掛けた。しかし、頼氏が総統候補を目指すのは、不人気の蔡氏では総統選は必敗、党勢の大幅後退は確実と考えているためで、蔡氏に取って代わることが重要なのだ。頼氏は総統候補レースで依然有利な状況で、「予備選で勝ったら自分を支持してほしい」と蔡氏に反論した。

/date/2019/04/15/20column2_2.jpg頼氏(中)は、統一地方選の大敗と、習近平中国主席による強圧的な統一攻勢が出馬動機になったと危機感を語っている(13日=中央社)

 蔡氏にとって残念なのは、自身の再選のために党内制度をねじ曲げ、支持層の民意に背く状況に陥っていることだ。蔡政権の「執政の価値」に対しては、昨年の統一地方選挙で厳しい民意が突き付けられており、説得力がない。民進党政権の継続に価値があるのならば、自身が不人気である以上、最も勝利の可能性が高い候補者を選ぶことに協力することは、考え得る選択肢だろう。

ベストは「頼蔡ペア」か

 ただ、蔡氏は民進党の低迷期から党勢を立て直し、政権奪回を成し遂げた功労者で、年金改革、労基法改革、国民党不当資産の追及では成果を出している。統一地方選惨敗の検討は結局見送ったままではあるものの、蔡氏を支えてきた党幹部、立法委員の大多数は蔡氏続投を支持している。党の論理としては「蔡頼ペア」が最も波風が立たず最良なのだ。

 だが、民進党にとってベストの組み合わせは、実は「頼蔡ペア」ではないのか。頼氏が予備選で勝利して蔡氏が排除された場合は、党の団結に悪影響が残りそうだ。

 頼氏が候補になっても民進党の総統選情勢が厳しいことに変わりはないが、それでも蔡氏よりは得票を増やせるはずだ。激しいつばぜり合いを繰り広げる両者がどのような判断を行っていくのか、今後1カ月の展開が大いに注目される。

吉川直矢

吉川直矢

ワイズメディア

東京外国語大学中国語学科卒。大手放送局記者、海外経済情報メディアでの編集長職を経て、07年Y'sニュース創刊に参加、以来編集長を務める。専門分野は台湾政治。
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