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記事番号:T00082512
2019年3月18日15:52

   本連載は筆者が約1年日本に帰国していたため休載していましたが、今月より再開します。引き続きご愛読のほど、よろしくお願い申し上げます。

/date/2019/03/18/20column1_2.jpg鄭氏(前右2)の集会を盛り上げた韓市長(前左2)。当初から投票率が勝敗を左右するとみられていた(中央社)

 新北市、彰化県、台南市、金門県の4選挙区で16日に行われた立法委員補欠選挙の結果は、民進党が地盤の新北市3区(三重区)と台南市2区(善化区など)を守った一方、国民党は彰化県1区を獲得したのみにとどまった。国民党は昨年11月の統一地方選挙大勝の勢いに乗って4選挙区全勝を目指したものの、金門県でも離党した無所属候補に不覚を取った。全体として投票率が伸びず、新北市と台南市では民進党に固定支持層を固められたことが敗因となった。

 国民党に吹いていた風はいったんやんだ。統一地方選では蔡英文政権への不満を吸収する形で大勝したが、有権者から積極的な支持を受けるようになったわけでないことが分かる。投票日前夜、新北市の候補者、鄭世維氏の支持集会には呉敦義主席をはじめ、馬英九前総統、朱立倫前市長、侯友宜現市長、韓国瑜高雄市長、盧秀燕台中市長と多くの大物が駆け付け、大きな盛り上がりを見せただけに敗北はショックだったことだろう。

/date/2019/03/18/20column2_2.jpg呉主席は国民党を勝利に導けなかった(中央社)

接戦を演出

 今回の補欠選挙も主役は韓高雄市長だった。結果が思わしくなかったことから、台湾メディアの中には「『韓流(韓国瑜ブーム)』効果が薄れた」と報じているところもあるが、そうとばかりは言い切れない。

 台南市(旧台南県も含む)は2008年に現在の小選挙区制度が導入されて以降、当選した国民党候補は1人もいない。そうした中、民進党陣営の分裂はあったものの、国民党の謝龍介氏が当選した民進党の郭国文氏を3,600票差、得票率で3%以内にまで追い詰めることができたのは、3回にわたって駆け付けた韓市長の応援の効果があったことは間違いない。謝氏は「ここはもともと18%(国民党の得票率)しかないのに、韓流のおかげでこの結果(得票率44%)を得られた」と語っている。

 新北市でも、当選した民進党の余天氏に比べ知名度で圧倒的に劣る鄭氏が5,700票差まで食い下がれたことにも、同じ理由が挙げられる。「韓流効果」は確かに存在したのだ。

依然人気でリード

 実際、鄭氏の支持集会で最後の方で韓市長が登場すると、会場のあちこちから来年の総統選挙への出馬を求める掛け声が相次ぎ、雰囲気がさらに盛り上がった。一方、朱前市長が登壇した際には、8年間務めた市長を退任したばかりであるにもかかわらず、「朱総統!」といった掛け声は全く聞かれなかった。

 党主席を務めたこともある朱氏は経歴では韓市長を圧倒しており、合理的に考えれば国民党の総統候補に最も近い人物だが、支持層の人気と期待度では韓市長がかなりリードしている。このことは、新北・台南両選挙区を勝利に導く「神通力」までは発揮できなかったものの、本人の選挙ではないため失点とはならず変化はない。むしろ、「お膝元」の新北市での敗北は、朱氏にとってのマイナス要素となった。

 今回の結果は、韓市長の過度なブームを冷ます契機となり、国民党に「韓流」に乗って総統選を勝ち切ろうというアイデアの見直しを迫ることになるのは間違いない。韓市長も今後は実際の手腕がより吟味されることになる。それでも、依然同党で最も人気を集める政治家であることに変わりはなく、国民党の総統候補選定は引き続き韓市長を立てるか否かが焦点となりそうだ。

吉川直矢

吉川直矢

ワイズメディア

東京外国語大学中国語学科卒。大手放送局記者、海外経済情報メディアでの編集長職を経て、07年Y'sニュース創刊に参加、以来編集長を務める。専門分野は台湾政治。
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