ニュース 法律 作成日:2023年5月10日_記事番号:T00108851
産業時事の法律講座捜索とは、検察官が犯罪の証拠を取得して犯罪を立証するための重要な手段です。ですがそれはある種の人権侵害の行動でもあります。
警察や検察官による違法な証拠収集を回避するため、法律では原則として、裁判所が違法な捜索で得た証拠を使用して判決を下すことを禁止しています。
しかし、公務員が法定の手順に従わずに取得した証拠が証拠能力を持つかどうかについて、法律では裁判所に対して「人権の保障と公共の利益のバランス維持を考慮」して個別に判断できる権力も与えています。
交通違反から薬物沙汰に発展
李宗栄は信号無視で警察官から停車を促されました。警察官は助手席に置いてあった釣り竿入れを怪しく思い、李の同意を得て触ったあと、中身は何かと尋ねました。李が自ら袋を開けると、そこには違法銃器と疑わしきものが入っていました。警察官は署に通報し、応援要請を行いました。警察官がさらにコンソールボックスの検査を要求したところ、中から覚醒剤のメタンフェタミン5袋、118.7グラムが見つかりました。
裁判所は李に対して違法薬物所持で有罪判決を下しました。しかし李は、警察の捜索は違法なものであり、それによって取得した薬物は証拠能力を持たないと主張し、上訴しました。
これに対して最高法院(最高裁判所)は2023年4月、上訴を棄却しました。その理由は、違法に取得した証拠(およびそれに派生する鑑定証拠)の証拠能力の有無を認定するには、以下のことを考慮しなければならないというものでした。
1.法定の手続きに違反した警察官の主観的意図および状況。例えば、合理的な疑いが十分にあったかどうか。
2.法定の手続きを行った場合、当該証拠を発見する必然性があったかどうか。例えば、当時合法的な手続きを経て捜索を行っていたら、当該証拠を発見できなかったかどうか。
3.当該証拠の使用を禁止することが違法捜査への抑止効果を持つかどうか。
4.犯罪によって生じる危険あるいは実害が被告に対する人権侵害を上回るかどうか。
5.被告が侵害された権益の種類とその程度。例えば「人権の保障という個人の利益と犯罪の防止という公共の利益のバランスをとること」に合致しているかどうか。
6.被告が防御権を行使するのに不利となる影響の程度。
この判決から分かるように、かつて台湾の裁判所は証拠収集の手続きは合法的でなければならないとの原則を厳しく守っていました。しかし、実施から長年が経ち、この方針に変化が生じています。
読者の皆さんがもし違法な証拠収集の場に出くわすことがあれば、自身の人権を守るためにも直ちに拒否するのが良いでしょう。
徐宏昇弁護士
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