ニュース 法律 作成日:2023年6月14日_記事番号:T00109490
産業時事の法律講座ドイツのメルセデス・ベンツ・グループAGは、ヘッドライトの意匠権侵害を理由に、台湾の帝宝工業股份有限公司(DEPO)をドイツと台湾の両方で提訴しました。台湾の智慧財産および商業法院(知的財産および商業裁判所)は2022年7月、原告の訴えを認め、帝宝工業に賠償金1800万台湾元(約8200万円)余りの支払いと、製品の製造・販売禁止、ならびに権利侵害をした製品のリコールを求める判決を下しました。
裁判所は、権利侵害をした製品の販売で帝宝工業が得た利益を1200万元と認定しましたが、帝宝工業の権利侵害が故意なものであると判断し、その1.5倍に当たる金額を懲罰的損害賠償として請求することにしたのです。
この案件の裁判が17年に始まったとき、実は被告も原告の意匠権に対して無効審判申し立てを行っていました。その理由は、明細書の中の図面に誤りがあるというものでした。例えば、各方面から見た図面の寸法の比率が一致していないこと、光の反射によって図面の一部が見えなくなっていることなどを理由に、この意匠権は専利法(特許法)が定める開示義務に違反しており、無効であると主張したのです。
しかし、経済部智慧財産局(日本の特許庁に相当)は18年11月、この申し立ては成立しないとの結論を下しました。帝宝工業が提訴した行政訴訟も、最高行政法院(行政裁判所)によって22年12月1日に棄却が確定しました。最高行政法院の理由はこうでした。
意匠を製造・実現できるか
専利法の規定によれば、図面は当該意匠を「それに基づいて実施できる」ものでなければなりません。それはつまり、意匠に関する図面と説明が「当該意匠の内容を明確且つ十分に記載し、その意匠の属する技術分野における通常の知識を有する者が、その図面と明細書に基づき、出願時の通常の知識をもって、その内容を理解し、当該意匠を製造あるいは実現できるもの」でなければならないのです。
一方、今回の係争意匠は、図面に問題があったかもしれませんが、業界技術者が見れば「全ての図面を相互に対比し、全体的に観察すれば、係争意匠全体のデザインを理解することは可能で、前述の誤差によって係争意匠全体のデザインについて誤解が生じるほどではない」というものでした。
この案件の被告は、係争意匠に類似したヘッドライトを生産する能力を持ちながら、裁判所によって権利侵害が認定されると、当該意匠の図面はその外観設計を正確に示していないと訴えたのですから、やはりこれはやや奇妙な主張だったわけです。
徐宏昇弁護士
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