ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム 会社概要 採用情報 お問い合わせ

コンサルティング リサーチ セミナー 在台日本人にPR 経済ニュース 労務顧問会員

第356回 失われた実用新案の優位性/台湾


ニュース 法律 作成日:2023年4月26日_記事番号:T00108626

産業時事の法律講座

第356回 失われた実用新案の優位性/台湾

 2016年7月に掲載されたこのコラムで、台湾で実用新案の申請件数は発明特許の申請件数のほぼ半分程度に上り、特許侵害訴訟の勝訴率についても発明特許とほぼ同じであると説明しました。実用新案は申請に際して実体審査を必要としないため、当時は実用新案の申請がベストな選択肢でした。

第206回 台湾で実用新案を申請する利点

https://www.ys-consulting.com.tw/news/65482.html

 時代が変わり、18年から22年の統計を見てみますと、実用新案の申請件数が発明特許の申請件数に占める割合が、18年の37.8%から22年は29.2%に低下していることが分かります。

/date/2023/04/26/20patent_2.jpg

 このほか、直近2年間の智慧財産および商業法院(知的財産および商業裁判所)が特許侵害に関して下した第一審の判決は表のようになっています。

実用新案、ほぼ勝訴なし

1.21年の発明特許に係る訴訟45件のうち、31%が権利無効と判断されました。主な理由は発明が新規性と進歩性を持たないというものです。また、47%は侵害が認められないと判断されました。22年は発明特許に係る訴訟28件のうち、18%が権利無効、39%が侵害は認めれないと判断されました。

/date/2023/04/26/20ip_2.jpg

2.21年の実用新案に係る訴訟12件のうち、58%が権利無効と判断されました。主な理由は創作が新規性と進歩性を持たないというものです。また、33%は侵害が認められないと判断されました。22年は実用新案に係る訴訟21件のうち、48%が権利無効、43%は侵害が認められないと判断されました。

3.22年の発明特許に係る訴訟で、勝訴判決で賠償金が100万台湾元(約440万円)を超えた判決は3件でした。21年には薬品に関する2件の判決が、それぞれ2000万元と4000万元の賠償金を勝ち取りました。いずれも原告は海外の薬品大手でした。

4.21年の意匠権に係る訴訟では3件の勝訴判決が、賠償金1800万元、780万元、1120万元を勝ち取りました。

5.現在、実用新案に係る権利侵害訴訟で実用新案権者が勝訴することはほとんどありません。

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士事務所

1991年に徐宏昇法律事務所を設立。全友電脳や台湾IBMでの業務を歴任。10年に鴻海精密工業との特許権侵害訴訟、12年に米ダウ・ケミカルとの営業秘密に関わる刑事訴訟で勝訴判決を獲得するなど、知的財産分野のエキスパート。専門は国際商務法律、知的財産権出願、特許侵害訴訟、模倣品取り締まり。著書に特許法案例集の『進歩の発明v.進歩の判決』。EMAIL:hiteklaw@hiteklaw.tw

産業時事の法律講座