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第355回 著作物の公衆送信/台湾


ニュース 法律 作成日:2023年4月12日_記事番号:T00108375

産業時事の法律講座

第355回 著作物の公衆送信/台湾

 台湾の著作権法は、他人の著作物を無許可で公衆送信することを禁止しています。公衆送信とは、「他人の著作物を、インターネット上で公衆がいつでもアクセスできるような方法で、公衆に送信すること」と定義されており、たとえ誰も閲覧やダウンロードをしなかったとしても、犯罪を構成します。

 雲山国際の販売員として働いていた呉苙穎は、2018年7~8月にかけて、同社が著作権を有する画像を、電子商取引(EC)サイト、蝦皮購物(ショッピー)の自らのアカウントにアップロードし、同社のスキンケア用品「時間寵愛保養品」の販売に利用しました。

 呉は19年4月に同社を辞めましたが、ショッピーでの販売は続けていました。20年11月に雲山国際が発見し、警察に通報したため、販売を停止しました。

 検察は、「18年7~8月にかけて」無許可の公衆送信によって雲山国際の著作権を侵害したとして、呉を起訴しました。

離職後も製品画像を使用

 22年3月、台北地方法院(地方裁判所)は呉を有罪としました。しかし、呉は18年の7~8月、雲山国際に勤務し、同社の著作物を使用する権利を有していたことが審理の中で明らかになったため、検察が起訴した「犯行期間」は、離職した19年4月~20年11月までに「訂正」されました。

 呉の控訴を受けた智慧財産及商業法院(知的財産および商業裁判所)は、22年11月9日、次のような理由から、原判決を破棄しました。

1.検察は、犯行期間を18年7~8月として起訴しているが、被告は同期間は同社に勤務していたため、犯罪を構成するものではない。

2.原判決は19年4月~20年11月までを犯行期間としたが、同期間の行為は起訴範囲外であり、裁判所はそれを裁くことができない。たとえ判決をしたとしても無効である。また、判決が存在する以上、第二審裁判所は、それを破棄し消滅させなければならない。

 判決確定後、最高検察署検察総長は非常上告をしましたが、最高裁は23年3月にこれを棄却しました。最高裁は判決で、「19年4月~20年11月9日までの係争画像の違法な公衆送信」と、「18年7月と8月にインターネット上で係争画像をダウンロードし販売するために使用したこと」は別問題であるとし、本件では、非常上告の必要はないと結論付けました。

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士事務所

1991年に徐宏昇法律事務所を設立。全友電脳や台湾IBMでの業務を歴任。10年に鴻海精密工業との特許権侵害訴訟、12年に米ダウ・ケミカルとの営業秘密に関わる刑事訴訟で勝訴判決を獲得するなど、知的財産分野のエキスパート。専門は国際商務法律、知的財産権出願、特許侵害訴訟、模倣品取り締まり。著書に特許法案例集の『進歩の発明v.進歩の判決』。EMAIL:hiteklaw@hiteklaw.tw

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