ニュース 法律 作成日:2023年1月11日_記事番号:T00106927
産業時事の法律講座特許の目的は、発明者が発明を公開するよう奨励することにあります。そのため、特許出願前にすでに開示された技術については、特許出願はできませんし、たとえ特許が許可され、また取り消されなくても、他者がすでに公開された方法で「実施」をした場合は、特許権の侵害にはなりません。これが「違法性を阻却する先行技術」の理論です。
公開済みの米国特許と同一
合宇実業は「保温水筒用ボディー」に関して、番号M450304で実用新案権を取得しました。合宇実業は、宸項企業の水筒「CSB-533」が、同社特許請求項2および5に該当することを確認したため、智慧財産及商業法院(知的財産および商業裁判所)に侵害行為の停止と200万台湾元(約900万円)の賠償を求める訴訟を提起しました。
第一審は、2018年11月に原告勝訴の判決を下しましたが、被告は、自社製品は原告特許出願前に公開されていた米国特許と同一であり、侵害に当たらないと主張して控訴しました。
第二審は、19年10月に次のように判示し、原判決を破棄、原告の請求を棄却する判決を下しました。
1.被告製品と原告特許請求項2は、文言上の記載は異なるが、請求項2の「均等な範囲」に含まれるものである。
2.この拡大した「均等な範囲」が、既に引用米国特許に示されているから、原告特許の範囲は、この範囲に及ばない。
3.被告は「違法性を阻却する先行技術」の法理に基づき、原告の特許を侵害しない。
原告の上告を受けた最高裁は、22年6月に次のように判示し、二審判決を破棄しました。
被告は自社製品が米国特許の図1、図2に示された水筒と同一であると主張しただけである。二審判決は、被告製品が米国特許の図4に示されたものと同一であると認定したが、そのことをまず原告に説明し、それに対するコメントを求めることもしなかった。これは原告に対する不意打ちである。
知的財産および商業裁判所は再審理の後、22年12月に次のように判示し、原告の請求を棄却しました。
▽原告の特許は20年に知的財産局に特許請求項2の取消を判断された。▽本裁判所も21年6月に同判断を支持、同請求項2には進歩性がないと判断している。▽そのため、原告はもはや保護を主張すべき特許を有していない。
このケースはリーガルマインドの代表的ケースです。二審の1回目の判決は法的推論の特殊性を、最高裁の判決は法律が要求する手続き上の公正さを、二審の2回目の判決は、法的紛争の根本的な解決方法「釜底抽薪」を、それぞれ示しています。
徐宏昇弁護士
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