ニュース 法律 作成日:2022年9月14日_記事番号:T00104728
産業時事の法律講座企業が従業員との間で、離職後の一定期間は競合他社で働かない旨に合意することを、競業避止義務といいます。その目的は、従業員が退職後に元の雇用主の企業秘密を利用して、元の雇用主に損害を与えることを防ぐことにあります。
TSMC調達部門の元幹部
薛宗智は、2011年7月から16年7月まで台湾積体電路製造(TSMC)で調達部門のマネージャーとして勤務していました。薛は離職時に、18カ月間は競合他社で働かないことに同意して競業避止義務契約にサインし、対価として補償金117万270台湾元(約540万円)を受け取りました。
ところが薛は16年12月から中国半導体大手の紫光集団に属する長江存儲科技(YMTC)の調達部門の副総裁に就任しました。
YMTCの子会社である武漢新芯積体電路製造(XMC)はTSMCの直接の競合相手でしたが、薛が離職時に受け取った「離職前注意書」には、新芯公司は競合相手だとの記載はありませんでした。
17年4月、この事実を発見したTSMCは、訴訟を提起し、薛がXMCで働くことはできないこと、および薛が離職する前の2年間の給与計1440万元と競業避止の補償金の返還を求めました。
薛は17年10月に紫光集団を離職しました。
競合の責任者、明白な違反
19年12月、桃園地方法院(地方裁判所)は、薛が競業避止義務に違反しており、TSMCに損害賠償を支払うべきとの判決を下しました。しかし、被告が紫光集団に勤務していた期間は1年未満であり、その間もTSMCの株価は上昇していたことから、「被告の競業避止義務違反により、原告が被った実質的損害を認めることは困難である」として、原告の請求額は高すぎると判断し、賠償額を250万元に減額しました。
被告はこれを控訴しましたが、21年4月に台湾高等法院(高等裁判所)が原判決を支持し、上告は最高裁で棄却されました。
最高裁は22年7月の判決で次のように述べています。
1.本件競業避止義務は、上告人の労働権の保護と被上告人の営業秘密の保護の必要性を考慮しており、目的の正当性、手段の必要性、制限の妥当性および衡平性などにかなったものである。
2.紫光集団のホームページ上の「重要声明」に掲載された内容によると、薛は離職前、XMCの調達部門の責任者でもあり、上記の競業避止義務に違反したことは明らかである。
徐宏昇弁護士
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