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第344回 消費者も商標法の保護対象/台湾


ニュース 法律 作成日:2022年8月24日_記事番号:T00104377

産業時事の法律講座

第344回 消費者も商標法の保護対象/台湾

 「AUTEL」は、中国の深圳市道通科技(AUTELインテリジェント・テクノロジー)の商標です。

 台湾の岑美国際は、2013年3月に「AUTEL」を自社商標として商標登録し、16~17年に道通科技より「AUTEL」製品の販売代理店と認められました。

 19年、道通科技が台湾での販売代理店を雷龍国際興業(雷龍オートパーツ・インターナショナル)に変更しました。岑美国際は、雷龍国際による商標「AUTEL」の使用禁止と同商標を使用した商品の廃棄を求め、智慧財産法院(知的財産裁判所)に対して訴訟を提起しました。

 智慧財産法院は、20年7月と21年5月に、岑美国際を支持する判決を下しましたが、最高裁は22年6月に次のように判示し、原判決を破棄しました。

商標の横取り登録

 最高裁は下記の見解です。

1. 岑美国際は、12年2月の時点で道通科技の商標「AUTEL」を認知していた。そのため、同社が13年に同商標の登録を申請したことには悪意がある。

2. 岑美国際は同商標を台湾で横取り登録することで、不正にその商標権を取得し、不公平な競争を行った。従って、本件商標権侵害排除訴訟の提起は、信義則に反し、権利の乱用に当たる。

3. 14年の道通科技と岑美国際の会議議事録には、「岑美国際は台湾におけるAUTELの全製品の販売代理店として認めるが、道通科技は他の台湾企業と台湾における販売代理店契約を締結する権利を有している」と記載されている。また、道通科技から台湾においてAUTEL製品を販売する権限が与えられた雷龍国際に、岑美国際の商標権を侵害することがなぜできるというのか?

 商標権横取り登録の最大の被害者は消費者です。商標が横取り登録されたことにより、消費者は本物を買えない、または偽物を買うことしかできないのです。

 本件において裁判所は、商標の所有権を判断するに当たって、訴訟当事者の利益だけでなく、商標の公共的利益も考慮する必要があることを判示したのです。

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士事務所

1991年に徐宏昇法律事務所を設立。全友電脳や台湾IBMでの業務を歴任。10年に鴻海精密工業との特許権侵害訴訟、12年に米ダウ・ケミカルとの営業秘密に関わる刑事訴訟で勝訴判決を獲得するなど、知的財産分野のエキスパート。専門は国際商務法律、知的財産権出願、特許侵害訴訟、模倣品取り締まり。著書に特許法案例集の『進歩の発明v.進歩の判決』。EMAIL:hiteklaw@hiteklaw.tw

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