ニュース 法律 作成日:2022年6月8日_記事番号:T00102972
産業時事の法律講座2019年1月23日付の本コラムでもお伝えしたように、立法院が会社法を改正したことで、外国企業は今後「認可」を必要とせず、刑事告訴ができるようになりました。しかし、結論から言うと、しばらく観察が必要なようです。
17年2月、デンマークのHaldor Topsoe(ハルダー・トプソー、以下HT社)は、次のように主張し、検察に刑事告訴をしました。
富利康科技(クリーン・エアー・テクノロジー)の董事長は、HT社に在籍していたデンマーク人技術者Schoubyeが知っているセラミックフィルター触媒含浸液の原材料、組成、比率、製造工程、供給元に関する情報がHT社の営業秘密であると認識しながら、Schoubyeにその漏えいを持ち掛け、類似製品の製造に利用した。これは、営業秘密法における「他者の営業秘密を不正に取得し、使用する罪」に抵触するものである。
検察は富利康の責任者を起訴しましたが、18年11月、高雄地方法院(地方裁判所)は「公訴の不受理」との判決を下しました。理由は、HT社は法人として認可されておらず、告訴する権利はないというものでした。
また判決は、18年11月に会社法が改正され、全ての外国企業は法人格を有するようになったが、この法改正を遡及(そきゅう)して適用することはできないと判断しました。
検察の控訴を受けた当時の智慧財産法院(現・智慧財産商業法院=知的財産商業裁判所)は19年に原判決を破棄し、一審に差し戻しましたが、被告はこれを上告し、20年2月、最高裁は上告を棄却する判決を下しました。
最高裁の見解は、次のようなものでした。
外国企業も告訴権
1.「知的財産権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS)」が立法院で可決され、総統によって公布された後は、その母国が世界貿易機関(WTO)に加盟している外国企業は、台湾政府の認可を受けたかどうかにかかわらず、その営業秘密が直接侵害を受けた際には告訴権を有する。
2.18年11月に会社法が改正・施行されたが、この改正は、TRIPSに関連する法規について「台湾政府による認可の有無にかかわらず、外国企業は台湾の法律の範囲内で国内企業と同じ能力を有する」という事実を確認したにすぎない。3.営業秘密法には従来、「認可を受けていない外国法人は、当法に規定する事項について告訴をすることができる」という規定はなかった。しかし、それは法的なミスであり、それを「認可を受けていない外国法人は告訴権がない」と解釈することはできない。同法は20年1月の法改正で上記の規定が盛り込まれたが、事実上は何も変わってはいない。
最高裁は、外国企業の告訴権を支持することを明確に表明しています。最高裁の見解によれば、会社法改正後、外国企業は知的財産権だけでなく、全ての権利侵害について告訴権を有することとなったわけです。
徐宏昇弁護士
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