ニュース 法律 作成日:2022年5月25日_記事番号:T00102741
産業時事の法律講座台湾の著作権法は、世界貿易機関(WTO)加盟国・地域であればその国民の著作権を保護しなければならないと定めています。しかし、台湾地区と大陸地区の人民関係条例(両岸人民関係条例)第78条は、中国の著作権者が著作権侵害を理由に、台湾で刑事告訴できるかどうかは、台湾の著作権者が中国で告訴できることを条件にしています。
中国広東省の深圳市金冠良品電子科技有限公司(以下「金冠」)のブルートゥースワイヤレススピーカー「K88」は2016~18年の間、台湾で大人気となり、その貝のような形状から、消費者に「小海螺(ホラガイ)」と呼ばれていました(以下「小海螺」)。
被告はもともと金冠から小海螺を購入していましたが、利益が出ると判断し、同様の形状のスピーカー「大牛V88」を製作し市場に投入しました。
18年、金冠は大牛が使用している円形の金属箱に、小海螺の包装金属箱と同じ「波模様」が印刷されていることを発見し、著作権法違反で台中地方検察署(台中地検)に刑事告訴しましたが、検察の起訴を受けた台中地方法院(地方裁判所)は、21年4月に無罪判決を下しました。
裁判所は判決で、「小海螺」の波模様は、日本の森雄山が明治36年に出版した『波紋集』に収録されている海水がぶつかり合っている波模様の絵図に近似し、鎌倉時代に既に存在した日本の伝統的な模様である「青海波(せいがいは)」にも似ているため、創作性がないとしました。そのため、たとえ被告の「大牛」の波が「小海螺」の波を模倣したとしても、著作権法違反にはなりません。
一定の収益があるか
検察の控訴を受けた智慧財産商業法院(知的財産商業裁判所)は22年3月、次のような理由から「公訴不受理」とする判決を下しました。
1.中国の法律では、台湾企業が中国で美術著作の侵害を主張する場合、まず加害者が3万人民元(約57万5000円)以上の不法収益を得たこと、または不法事業で販売した額などが5万人民元に達したことを証明しなければ、中国の裁判所は案件を受理しない。
両岸人民関係条例の「互恵原則」に基づき、中国企業の著作権が台湾で侵害された場合も、加害者が3万人民元の不法利益を得たこと、または販売した額などが5万人民元に達したことが証明されなければ、台湾の裁判所は事件を受理できない。
2.告訴人は、被告が以前は告訴人から真正品を大量に購入したことは証明できたが、そのことからは「被告が自ら侵害品を製造した後に同量を販売できた」ことは、直接的に推認することはできない。また、被告の販売にかかる統一発票(公式レシート)の金額は、前述の金額を超えてはいるが、それらが全て侵害品の販売した売上高であることは証明できない。
本案は現在、最高裁に上告されています。
中国では、多くの刑事犯罪は▽「状況が重大」、▽「特別重大」、▽「比較的多額」、▽「巨額」──などを案件受理の条件としているため、他国の裁判所が「互恵原則」を適用すれば、本案と同じ結論に達する可能性があります。この点は注意すべきでしょう。
徐宏昇弁護士
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