ニュース 法律 作成日:2022年3月9日_記事番号:T00101412
産業時事の法律講座中国には「酒に酔うと本音が出る」ということわざがあります。人は酒を飲むと嘘をつく力が弱くなりますが、言っていることが本当とは限らなくなります。少なくとも裁判所はそう判断しています。
記憶が不明瞭、捻じ曲げも
台湾高等法院(高等裁判所)は2013年、酒に酔い、男性の先輩の家で嘔吐(おうと)した女性が、「シャワーを浴びている際に先輩から性的暴行を受けた」と訴えたことに対し、女性の証言は採用できないと判断しました。▽被害者の供述が毎回異なる、▽被告宅には当時、ほかにも友人がいたにもかかわらず、彼女は全く助けを求めなかった、▽事後、被告に「お姫様抱っこ」されて3階まで連れて行かれた、▽当日の病院でのけがの検証や警察への届け出の際に、性的暴行について話していなかった──ためです。
高裁は判決で、「通常、行動能力に影響を与えるほどにアルコールを摂取した場合、意識状態もアルコールの影響を受け、明瞭ではない。また、酔いが覚めた後は酔っていた時の記憶が完全でないことが多い」と明確に判断しました。最高法院(最高裁判所)も支持しました。
また、高裁が20年3月に下した別の判決では、告訴人は「元彼からモーテルで性的暴行を受けた」と訴えたことに対し、合意の上での性行為だったとしました。告訴人は調査中、性的暴行の状況について印象が曖昧だと証言したにもかかわらず、裁判所での審理中は「しばらくの間、落ち着いて、当時の状況を思い出そうと努力してきた。その感覚を今、思い出した。確かに感じることができる」としました。この証言は「人の記憶は時間とともに薄れる」という自然の法則に反しており、採用できないためです。
高裁台中分院の20年3月、告訴人が、タクシー運転手である被告が、告訴人の携帯電話を探すのを手伝った際に、リュックから10万台湾元(約41万円)を強奪したと主張した裁判で、一審と同様に被告を無罪としました。
同裁判所は判決で、「人は酔うと意識による行為抑制が利かなくなり、また意識そのものも曖昧になりやすい。告訴人は酒に酔っていたため、一般人と同程度の認識能力があったか、事件を正しく理解し、記憶できたかどうかに疑問が残る」と判断しました。
高裁が18年8月に判決を下した裁判では、酒に酔った告訴人が帰宅する途中、被告と口論になり、財布をなくしたことから、被告にひったくられたと訴えました。
高裁は、「被害者は泥酔していたため、事態を認識することも、記憶することもできない状態だった。何かを知覚できる精神状態になかった状況についての陳述が、意識があってのものなのかについて、疑問が残る」と判断しました。
これらの判決は、被害者が酒によった状態では、真実と想像を区別することが困難で、後から、存在しない記憶が「作られる」ことがあると判断しています。裁判所は飲酒後の記憶に、良い評価をしていません。自分や他人を傷つけないために、お酒は控えめにすることです。
徐宏昇弁護士
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