ニュース 法律 作成日:2022年4月27日_記事番号:T00102243
産業時事の法律講座営業秘密侵害訴訟の原告は、特許法、著作権法、商標法などで保護されていない秘密技術やビジネス情報の保護を主張します。これらの秘密が侵害された場合、通常は差し迫った損害の危険がありますが、訴訟となった後は秘密の内容や帰属を証明することが非常に困難であり、訴訟が大幅に遅延、はては無意味となる可能性もあります。
ドライバICのパッケージング・テスティング(封止・検査)大手、頎邦科技(チップボンド・テクノロジー)は2016年8月29日、次のように主張して、当時の智慧財産法院(現・智慧財産商業法院=知的財産商業裁判所)に訴えを提起しました。▽長華電材(CWE)と易華電子(JMCエレクトロニクス)は不当な方法でチップボンドの職員15人を引き抜いた、▽チップボンドの営業秘密を取得したことで、易華電子がエッチング工程を速やかに再開できるようになった、▽被告に損害賠償を請求する──。
本件訴訟は長年にわたりましたが、21年3月25日、ようやく双方の弁護士が、争点は▽原告の営業秘密の範囲、▽法的要件の有無、▽被告が原告の営業秘密を不正に取得、使用したか──にあることを確認し、書面に署名しました。
訴訟の遅延を防止
ところが、原告は書面で次のような追加請求を行いました。被告らは集団で退社し、かつ原告のデータベースを易華電子に移したことで、エッチングラインを迅速に再開、原告の人材不足に乗じて市場を奪取し、結果として原告の出荷量が減少した。
しかし智慧財産商業法院は21年8月、これら2つの請求について、裁判所が審理すべき内容が異なることを理由に、追加請求を認めない決定を下しました。
チップボンドがこの決定を抗告した結果、同裁判所は▽チップボンドの追加請求と元の請求の原因事実には共有性と関連性がある、▽元の請求で主張された事実と証拠資料が追加訴訟で利用できる、▽被告の防御権と訴訟の経済性を阻害しない──などとして、21年10月に原決定を破棄、追加請求を認めました。
被告は最高法院(最高裁判所)に抗告しましたが、最高裁は22年2月に被告の抗告を棄却、本件は審理を再開しました。
最高裁が抗告を破棄した理由は次のようなものでした。裁判所が追加請求を認めないことについては抗告できるが、それを認めることについては抗告できない。被告の抗告は違法である。
法が追加請求を認めない目的は、訴訟の遅延を防止することにあります。しかし、訴訟の提起から5年以上経っても審理の範囲すら確定できない案件について、どのような立場から追加請求を認めないと言っているのでしょう。おかしな話です。
徐宏昇弁護士
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