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第337回 模造商標の鑑定レポート/台湾


ニュース 法律 作成日:2022年5月11日_記事番号:T00102484

産業時事の法律講座

第337回 模造商標の鑑定レポート/台湾

 有名ブランド品ほど容易に模造されます。模造品を発見したメーカーは、智慧財産保護警察(知的財産保護警察)に取り締まりを依頼します。このようなケースでは、裁判官は通常、商標権者から提供された鑑定レポートに基づいて、押収された商品が模造品であるかどうかを判断します。鑑定レポートは通常、弁護士や技術者が作成しますが、このレポートに漏れがあると、取り締まりができなくなる可能性があります。

ヴィトンの模造品

 2019年4月、潘冠宇はフェイスブック(FB)のブランド交換グループで、李効錡からルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)の商標を使用した革財布を3000台湾元(約1万3000円)で購入しました。受け取った商品を見て模造品と判断した潘は警察に届け出ました。

 ルイ・ヴィトンが作成した報告書には、キャンバスの品質と仕上がりが本物のルイ・ヴィトンの水準と一致しないとの記載がありました。

 また、検察官は実況見分の結果「ステッチが細すぎて、デザイナーズバッグに使われる太いステッチとは異なる。財布の右上部が斜行しており、またステッチによって財布の縁が切れている。加工者の技術がデザイナーズバッグの品質管理にそぐわず、素材も明らかに粗悪である」と認定しました。

 これに対し李は、▽財布は日本の有名な中古ショップから転売屋を通じて購入した▽ステッチは経年劣化のため修理した結果である──と主張しました。

 21年2月、桃園地方法院(地方裁判所)は、インターネット上で大衆に情報を発信して詐欺を行ったとして懲役1年の実刑判決を言い渡しました。

 李は控訴後、ルイ・ヴィトンとの間で賠償金を支払うことで和解しましたが、21年9月、智慧財産商業法院(知的財産商業裁判所)は原判決を支持し、執行猶予は付けませんでした。実は李は以前に飲酒運転で起訴猶予処分となっており、今回の犯行はその猶予期間内のものだったからです。

 22年4月、最高裁は次のような理由から原判決を破棄しました。ルイ・ヴィトンの鑑定レポートには、「鑑定の結論のみが記載されており、それ以外の部分、すなわち判断や証拠を作成する根拠の方法、情報、鑑定人の専門的能力に関する説明は一切なかった」ため、押収された商品が「上記商標商品が模造品であることを識別できる特徴を有していたか否か」について実質的な調査を行うよう下級審に求める──。

 被告は、裁判所が刑を重く見たことを喜ぶべきです。もし、原判決が懲役6カ月以下であれば、最高裁は被告の上告を「問題ない」として棄却していたかもしれません。

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士事務所

1991年に徐宏昇法律事務所を設立。全友電脳や台湾IBMでの業務を歴任。10年に鴻海精密工業との特許権侵害訴訟、12年に米ダウ・ケミカルとの営業秘密に関わる刑事訴訟で勝訴判決を獲得するなど、知的財産分野のエキスパート。専門は国際商務法律、知的財産権出願、特許侵害訴訟、模倣品取り締まり。著書に特許法案例集の『進歩の発明v.進歩の判決』。EMAIL:hiteklaw@hiteklaw.tw

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