ニュース 法律 作成日:2022年4月13日_記事番号:T00101992
産業時事の法律講座台湾には「正義哥(正義マン、自粛警察などのような存在)」と呼ばれる人たちがいます。不正を見つけると、すぐに正義の旗印を掲げて介入してくるお節介な人たちです。しかしほとんどの人はそのような行為が違法だと知りません。お節介された側が声を上げ難いため、彼らは自分は正しいと錯覚するのです。
白聡結氏は新北市淡水区にある「江南社区(団地)」の住民管理委員会の委員長を務める70歳の男性です。
コロナ禍真っただ中の2021年4月、政府は外出時のマスク着用を義務付け、罰金規定も設けました。
ある日、白氏は団地1階ロビーで、住民の李徳隣氏がマスクをせずにロビーに入ろうとしているのを発見したため、マスクを着けるよう注意しました。しかし李氏が無視して中に入ろうとしたため、白氏はドアの取っ手を引いて阻止、さらに李氏を何度か手で押しのけました。
李氏は新北市政府警察局淡水分局に対し白氏を「強要罪」、つまり暴力または脅迫により、義務のないことを強要したり、権利の行使を妨害した罪で告訴しました。
一般市民に介入権限なし
検察による捜査の結果、白氏は起訴されました。22年3月31日、士林地方法院(地方裁判所)は白氏を有罪とし、2,000台湾元(約8,600円)の罰金としました。白氏は告訴人と和解しなかったため、執行猶予は付きませんでした。
裁判所は、被告は李氏が「マスクなんかしねえぞ、べらぼうめ!」と言ったために、李氏がロビー入る権利の行使を暴力的に妨害したと判断しました。また被告の行動は「感情の管理、コントロールができておらず、さらに法治観念が希薄であり、不適切である」としました。
台湾では、このような法治観念のない正義マンがしばしば報道されます。例えば、電車で優先席を譲ることを強要する人などです。彼らの行為はヤクザと何ら変わらない犯罪です。しかし、それを法を根拠に批判するジャーナリストはいません。
個人の自由を尊重することは、民主主義と法の支配の重要な基盤です。たとえルールに違反した人でも、それに直接介入できるのは裁判所と、法律で権限を与えられた人だけです。
徐宏昇弁護士
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