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第330回 不倫の損害賠償/台湾


ニュース 法律 作成日:2022年1月26日_記事番号:T00100799

産業時事の法律講座

第330回 不倫の損害賠償/台湾

 台湾司法院大法官会議は、2020年に姦通罪を違憲としましたが、それは「刑罰で婚姻制度と夫婦関係を擁護することは、憲法23条の比例原則と矛盾する」というだけの理由でした。

 配偶者の一方が、通常の交友関係を超えた関係を他者と持ち、配偶者が享受する「通常の友人関係以外の感情的交際に係る排他的権利」を侵害した場合、性的行為がなくとも、配偶者権を侵害したことになります。

通信アプリの会話が証拠に

 その賠償額については、21年12月30日に各地の裁判所が類似の案件についてそれぞれ次のような判決を下しました。

・原告の妻が不倫:24万台湾元(約99万円)

性行為を認定。原告は葬儀業の経営者。妻の不倫相手は葬儀の音楽家。(新北地方法院=地方裁判所)

・原告の妻が不倫:25万元

通信アプリの会話から、原告の妻と不倫相手が不適切な関係にあることを認定。妻は水資源局の職員。不倫相手は職場の上司。(台南地方法院)

・原告の妻が不倫:25万元

産科検査記録から、原告の妻と不倫相手の姦通を認定。原告の年収は42万元。被告は収入を偽っていた。(台南地方法院)

・原告の夫が不倫:60万元

夫と不倫相手が何度もホテルで「休憩」していたことを認定。性行為があったかは証明できなかったが、損害賠償を認めた。夫と不倫相手は証券会社の同僚。不倫相手は何度も書面で原告を批判していた。(台北地方法院)

・原告の夫が不倫:25万元

ドライブレコーダーの記録と、対話アプリのLINE(ライン)の会話から、夫と不倫相手の性行為を認定。原告は主婦。被告は定職なし。(台中地方法院)

・原告の妻が不倫:5万元

メッセンジャーアプリ、微信(WeChat、ウィーチャット)の会話から、2人が通常の関係を超えていたと認定。原告は中古車販売業者のオーナーで、被告は警備員。原告と妻は結婚から2年半しかたっておらず、妻と不倫相手は10年以上前からの知り合いだった。(台北地方法院)

 22年1月には、裁判所が次のような判決を下しました。

・原告の夫が不倫:40万元

不倫相手は原告の夫の子を妊娠中。夫婦ともに工場労働者で、不倫相手は無職。(彰化地方法院)

・原告の夫が不倫:35万元

LINEの会話から不倫を認定。原告は失業中。原告の夫は小籠包店のオーナー。不倫相手は無職。(新北地方法院)

・原告の夫が不倫:50万元

軍職の夫の不倫を、同僚がインターネット上で暴露し発覚。夫は軍職を解かれた。(台北地方法院)

 これらの案件からは、姦通罪が廃止された後、原告は配偶者が男女の交友関係の一線を越えたことを証明すれば、「不適切な関係」が認められていることが分かります。多くの場合、原告は100万元の損害賠償を求め、裁判所はそのうち25万元を認めています。性行為があったことを証明できれば、損害賠償額は加算されます。訴訟で最も有効な証拠は、通信アプリの会話です。

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士事務所

1991年に徐宏昇法律事務所を設立。全友電脳や台湾IBMでの業務を歴任。10年に鴻海精密工業との特許権侵害訴訟、12年に米ダウ・ケミカルとの営業秘密に関わる刑事訴訟で勝訴判決を獲得するなど、知的財産分野のエキスパート。専門は国際商務法律、知的財産権出願、特許侵害訴訟、模倣品取り締まり。著書に特許法案例集の『進歩の発明v.進歩の判決』。EMAIL:hiteklaw@hiteklaw.tw

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