ニュース 法律 作成日:2022年2月9日_記事番号:T00100933
産業時事の法律講座会社法は、股份有限公司(株式会社、以下「会社」)の董事長は対外的に会社を代表し、その権限の範囲は法律に規定するとしています。董事長が合法な権限を持たずに会社を代表し、資産を譲渡した場合は、会社がそれを認めたときに限り、会社に対して効力を発します。そのため、経営権に争いがあると、董事長による資産譲渡の有効性が問題となります。
商標「橘平屋」は楊智欽が創作し、2010年9月に海揚国際企業股份有限公司が商標登録したものですが、同社の経営権に争いが起きた際、当時の董事長蕭万徳は、楊と商標登録出願権の変更譲渡の協議書を取り交わし、商標を楊に返還することを約束しました。同年11月、蕭は別途「商標移転申請書」に署名押印し、同商標をブルネイ企業「至盛国際有限公司(ESITO International Corporation)」に譲渡しました。そこで海揚は同商標の返還を求め、智慧財産法院(現・智慧財産商業法院=知的財産商業裁判所)に提訴しました。
善意かどうか
(以下、原告とは海揚、被告とは至盛を指す)
11年10月、智慧財産法院は書類に押された印鑑が全て本物だったことを理由に、原告の訴えを退けました。また、蕭は10年10月末に解任されましたが、登記変更されるまでは「善意の第三者」にとっては会社の責任者だったとしました。
控訴審の二審智慧財産法院は、蕭が押印したときには、楊は蕭が会社の責任者ではなかったことを「知り得た」として、被告に商標の返還を命じました。
上告後、最高法院(最高裁判所)は14年8月に次の理由から原判決を破棄しました。「董事長が会社を代表して行った取引について、その相手方が善意である場合、会社は董事会の決議がない、または決議に瑕疵(かし)があることだけを理由として、その有効性を否定することはできない。原審は楊が善意であったかどうかについて確実な調査をしなければならない。」
19年4月、智慧財産法院は次の理由から原告敗訴としました。「楊は係争商標を海揚に使用させたのは誤りであるとしているが、それは別途法律により解決すべきことで、董事長と総経理の私的な合意による譲渡によるべきではない。
しかし上告後、20年11月、最高法院は次の理由から判決を差し戻しました。「原判決は『被控訴人(海揚)は長年株主総会や董事会を開催したことがなく、全ての業務決定や対外取引は董事長と総経理が行っていた』と認定しているが、ではなぜ楊が蕭による商標譲渡の有効性を信じたことは善意ではないのか?」
21年12月、智慧財産商業法院は「係争商標の創作者は楊であり、海揚の資産ではない」と判示、海揚の控訴を棄却しました。また、▽楊は海揚が商標登録出願することに同意したが、登録が完了する前に合意により返還されていた、▽商標出願権の譲渡は「会社資産の譲渡」ではないため、特別授権を必要としない──としました。
本判決は上告可能ですが、本案は提訴から既に10年以上経過しており、また海揚は21年6月に営業停止を申請しています。
徐宏昇弁護士
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