ニュース 法律 作成日:2022年1月12日_記事番号:T00100536
産業時事の法律講座外観設計特許(デザイン特許、意匠登録:以下「設計特許」)は、形状、模様、色彩、または、これらのうち2つ、もしくは全ての組み合わせによる特許の保護です。
設計特許は、物品の外観「のみ」によるもので、ほとんどの国では実体審査が行われないため、容易に取得できます。また、外観から直接、権利侵害の判断が可能なため、重要な資産です。
しかし同特許は、出願時に技術的内容の審査こそありませんが、特許としての厳格な審査は行われます。この手続きを経なければ、貴重な特許が失われてしまう可能性もあります。
ニュージーランドのフィッシャー&パイケル・ヘルスケアは、2020年7月24日に、加湿器の設計特許を知的財産局(IPO)に出願、米国出願日の20年2月10日を優先日として主張しました。
その際に提出された図面には、加湿器の形状が1種類、パネル、色のデザインが11種類含まれていましたが、出願代理人は、それら全ての図面、計84枚を、1件の出願案として提出し、実質的な記述を何も加えませんでした。
20年8月8日、IPOは同社に対し、「設計特許明細書」の提出と、各図面の名称を記載するよう求め、同社は同年11月23日、補正書類を提出しました。
しかし、提出された設計特許説明書には、何ら実質的な記載はなく、84枚の図面についても、1~7枚にそれぞれ六面図と透視図の、その他の図面77枚には「参考図」の記載があったのみでした。
それにもかかわらず、IPOは21年1月28日に同出願を許可しました。
特許許可後に分割できず
問題は、同社が当初、2~11件の設計を、分割出願、または図柄関連特許出願するつもりだったことです。しかし、特許許可後に、分割、関連出願することはできません。
そこで同社はIPOに対し、特許許可の撤回を求めましたが、IPOが却下したため、同社は行政訴訟を提起しました。
IPOに注意義務なし
21年12月、知的財産および商業法院は、次のような理由から、同社の訴えを退けました。
1.出願人は補正時に、7枚の図について、それぞれ六面図と透視図と記載しており、これは設計特許の出願要件を満たしている。そのため、IPOが同出願を許可したことに誤りはない。
2.出願人は、特許を受けるまでの長い間、同出願を分割、関連出願することができたが、それを行わなかった。また、IPOにはこの件について、出願人に注意喚起する義務はない。
本外観設計特許のうち11件は、いずれも出願人の怠慢によって権利が失われました。また、許可された特許に添付されたことによって図面が一般に知られてしまい、損失は多大なものとなってしまいました。
徐宏昇弁護士
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