ニュース 法律 作成日:2021年11月24日_記事番号:T00099716
産業時事の法律講座原告の矯立達は、中華航空(チャイナエアライン)で25年間勤務し、2002年に定年退職しました。同年および05年に、退職金および給与未払いについて、同社と係争関係となりました。
同社は、定年退職した社員の優待航空券に関する制度を設けていましたが、係争関係となった原告に対して同社航空券の権利を一方的に停止しました。
原告は訴訟の終了後、二度にわたり復権を求めましたが、同社に拒否されたため、再度裁判所に対して、原告が同権利を有することの確認を求めました。
第一審の台北地方法院(地方裁判所)は、19年10月に原告の訴えを退けました。原告の控訴を受けた台湾高等法院(高等裁判所)は、21年2月に原告を逆転勝訴とし、原告が同権利を行使できなかったことで被った差額の損失1万8,000米ドルを損害賠償として支払うよう命じました。
同社の上告を受けた最高裁判所は、21年10月に次のような理由から、原判決を破棄、差し戻しました。
「契約後の義務」か、恩恵か
1.「契約後の義務」とは、契約関係が終了した後であっても、債権者の原契約に係る利益以外の固有の利益を保護するためのもので、契約当事者双方が、作為または不作為の義務を負う。契約こそ存在しないが、これらの義務に違反した場合は、損害賠償責任を負う。
2.雇用主の退職社員に対する給付が、「恩恵」としての性質のものである場合、労務との対価はなく、無償給付となる。雇用主が、同給付に係る要件を作業規則内に設けている場合、同規則の内容および雇用主が後日行った給付に係る決定が、平等原則または比例原則に違反していないときは、雇用主および同退職社員共にその拘束を受ける。
3.本件における優待航空券は、契約後の義務であるのか、また恩恵としての性質を持つのか、原審は、この点について判断していない。もし恩恵であるならば、原告が二度目の訴訟の敗訴が確定した後に再審を申し入れた際に、▽同社は原告の復権を拒否したが、ここで保護すべき利益とは何なのか、▽拒否したことは平等原則に違反しないのか、▽同じ目的を達成することができる他の手段はないのか、▽原告が起こした二度の訴訟により同社が受けた損害または影響と、原告が受けるべき権利停止の期間との関係は比例原則に沿っているのか──などについて再度検討する余地がある。
この判決からは次のことが分かります。契約後の義務は、一種の契約上の義務であり、雇用主がそれを拒否した場合は相手方の損害を賠償することになる。恩恵的な給付である場合、強制力は高くないので、雇用主は正当な理由から拒否することができる。
雇用主は福利制度を設計する際にはこれらの点を十分に理解することで、後日の紛争を避けることができるでしょう。
徐宏昇弁護士
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