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第323回 登録商標の「不専用部分」/台湾


ニュース 法律 作成日:2021年9月22日_記事番号:T00098522

産業時事の法律講座

第323回 登録商標の「不専用部分」/台湾

 商標法には、登録を出願する商標に説明性のある文字が含まれている場合、同部分が「不専用」である旨の声明を行わなければ、同商標の登録は認められないとの規定があり、登録後商標権者は同部分について商標権を主張できません。

「101」の商標

 2017年、台北金融大楼股份有限公司(台北101、原告)は、知的財産法院(知的財産裁判所、現・知的財産および商業裁判所)に次のように主張し、訴訟を提起しました。

 ▽原告は著名商標である「台北101」と「TAIPEI 101」を有している。▽数字科技股份有限公司(被告)は経済部智慧財産局(知的財産局)に対し商標「101 名品会」を出願した。▽原告が異議を申し立てたため、当局は登録を取り消したが、被告は現在も商標「101 名品会」を使用している。▽被告は原告の商標権を侵害していることから、被告が商標「101 名品会」および「台北101」「TAIPEI 101」に近似する商標を使用することの差し止めを求める。

 同裁判所は18年4月に原告勝訴としましたが、被告が控訴、同裁判所第二審は19年3月に再度原告勝訴としたため、被告は次のように主張し、上告しました。

 ▽原告は商標登録時に「101部分は不専用」との声明を行っている。▽原審が、被告商標に原告商標と同様の「101」が含まれることから両商標は近似しており、消費者を混交させると判断したことは過ちである。

混交の恐れがあるか

 最高裁は21年6月に次のような理由から被告の上告を退けました。

1.登録商標に専用ではない部分が含まれていても、商標権者が取得したのは商標全体の権利であり、不専用を声明していない部分の権利ではない。

2.商標に混交誤認の恐れがあるかどうかの判断は、図案全体によってなされるべきで、その一部のみによるのではない。そのため、不専用の部分であっても商標近似の判断に影響する。

3.原告は「101」部分について単独で商標権を主張できないが、「101」は係争商標の特徴的部分であり、両商標が近似を構成するかどうかの重要な根拠となる。

 商標の不専用部分にもその機能があり、特に権利侵害を判断する際には部分的ではなく、全体的な判断は必須です。下級審は既に両商標に対して詳細に比較し説明した上で、近似と消費者混交の恐れを判断していました。最高裁による「101」は係争商標の特徴的部分との解釈は蛇足に過ぎません。

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士事務所

1991年に徐宏昇法律事務所を設立。全友電脳や台湾IBMでの業務を歴任。10年に鴻海精密工業との特許権侵害訴訟、12年に米ダウ・ケミカルとの営業秘密に関わる刑事訴訟で勝訴判決を獲得するなど、知的財産分野のエキスパート。専門は国際商務法律、知的財産権出願、特許侵害訴訟、模倣品取り締まり。著書に特許法案例集の『進歩の発明v.進歩の判決』。EMAIL:hiteklaw@hiteklaw.tw

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