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第318回 20年の特許訴訟統計/台湾


ニュース 法律 作成日:2021年7月14日_記事番号:T00097235

産業時事の法律講座

第318回 20年の特許訴訟統計/台湾

 2016年7月末の本コラム(第206回 台湾で実用新案を申請する利点 https://www.ys-consulting.com.tw/news/65482.html)では、台湾における特許侵害訴訟の統計(15年)を紹介し、台湾の「新型専利(実用新案)」は実質審査を経ないが保護内容は「発明専利(発明特許)」に相当すること、経済部智慧財産局(知的財産局)の審査では発明特許がより有効とはならないことから、費用が安い「新型専利」を出願することをお勧めしました。

 さて、あれから5年経ちましたが、知的財産法院(知的財産裁判所)の特許関連訴訟の判決結果を見る限り、結論に変わりはないようです。

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1.知的財産裁判所は20年は計68件の特許侵害に関する一審判決を下した。うち発明特許に関するものは33件、実用新案29件、意匠登録6件

2.33件の発明特許に関する判決中、特許権者が勝訴したものは6件(18.2%)。また、敗訴した27件中、裁判所が特許無効と判断したもの14件(42.4%)、侵害そのものが認められなかったものは13件(39.4%)。

3.29件の実用新案に関する判決中、特許権者が勝訴したものは6件(20.7%)。また、敗訴した23件中、裁判所が特許無効と判断したもの13件(44.8%)、侵害そのものが認められなかったものは12件(41.4%)(一部の判決では同時に多種の特許権者の敗訴原因を認定している)。

4.被告に100万台湾元(約390万円)を超える損害賠償を命じた判決も一審二審各3件あり、二審については賠償額が4億2,000万台湾元を超えたものもあった。

5年経過も「新型専利」優位

 これら統計結果からは15年と同様の結論を導き出せます。

1.台湾における特許侵害訴訟では、発明特許権の行使と、実用新案権の行使はほぼ同数だが、20年は実用新案の勝訴率は発明特許のものより高い。

2.発明特許は実質審査を経るが、その有効性の維持率は(無効例42.4%)、実質審査を経ない実用審査のそれ(無効例44.8%)とほぼ変わらない。

 20年の一審判決は68件と、15年の81件から16%減少した。また、多くの特許権者は損害賠償を請求していない。これらは知的財産裁判所が認める賠償金額が低いことに起因すると考えられる。

 一方で、賠償金額が100万台湾元を超える案件は明らかに増えていることから、裁判所がゆっくりとではあるが特許を保護する方向へ軌道修正していることが見て取れる。

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士事務所

1991年に徐宏昇法律事務所を設立。全友電脳や台湾IBMでの業務を歴任。10年に鴻海精密工業との特許権侵害訴訟、12年に米ダウ・ケミカルとの営業秘密に関わる刑事訴訟で勝訴判決を獲得するなど、知的財産分野のエキスパート。専門は国際商務法律、知的財産権出願、特許侵害訴訟、模倣品取り締まり。著書に特許法案例集の『進歩の発明v.進歩の判決』。EMAIL:hiteklaw@hiteklaw.tw

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