ニュース 法律 作成日:2021年7月28日_記事番号:T00097484
産業時事の法律講座専利権(日本の特許権に相当)の間接侵害とは、行為者が製造した物は特許権を侵害しないものの、それが特許権を侵害する物にとって不可欠な部品であり、かつ特許権侵害以外の用途がない場合、特許権を侵害したとされることです。米国、日本などでは規定が設けられています。
台湾でも2008年に間接侵害責任の立法化の話が持ち上がりましたが、各界の反対から見送られました。裁判所は現在、台湾の法律上、特許権の間接侵害という概念は存在しないものとしています。
直接参与・介入の有無
18年、智佳電子股份有限公司は知的財産法院(知的財産裁判所)に訴訟を提起し、▽正豊自動車用品股份有限公司が製造する「ドア追突防止警告灯(配線不要)」は智佳電子の特許I586562号を侵害している、▽請求項6は方法特許だが、被告の製品には同方法が欠かせず、間接侵害を構成している──と主張しました。
知的財産法院は、一審、二審共に原告勝訴としましたが、間接侵害については次の理由から認めませんでした。
1.台湾の特許法には「間接侵害責任」の概念はない。そのため、行為者の主観上の意図およびその行為形態が、第三者による特許権の侵害に直接的に参与または介入しているのでない限り、第三者の侵害行為との関連のみをもって権利侵害の責任を負わせることはできない。
2.係争特許の請求項6は方法特許である。たとえ係争製品がその使用時に同方法を実施するとしても、控訴人は被控訴人が購入者に権利侵害を行うことを教唆したこと、すなわち購入者に権利侵害の故意または過失があったことを証明していない。そのため被控訴人が共同権利侵害者であるとすることはできない。
因果関係の有無
同裁判所は間接侵害について、過去にもいくつかの判断を下しています。
1.19年4月判決:被告製品の規格書には、SR FETと合わせて使用することができるとの記載があり、その場合、原告特許の侵害とはならない。そのため、被告製品は直接侵害を構成せず、また間接侵害も構成しない。
2.18年6月判決:主侵害行為者に不法行為が成立し、かつその教唆、幇助行為と権利侵害の結果との間に相当因果関係がある場合に限り、教唆者、幇助者には「共同侵害行為」が成立する。
3.16年4月判決:被告企業は係争製品に他の用途があることを証明していない。係争製品の説明書に記載されている通常の使用方法は、係争特許の請求項を侵害している。原告企業も一般の市場で係争製品を使用したグラフィックカードを購入しており、係争特許の請求項を侵害している。そのため、被告企業が係争製品を製造、販売した行為は、たとえ係争特許を侵害する物の製造、販売でなくとも、使用または販売の申し込みがあったこととなり、係争特許の侵害に当たる。
これらの判断からは、台湾では今のところ間接侵害は認められていませんが、特定の状況においては、特許侵害への使用を目的とした製品に対して権利を主張することは不可能ではないことが分かります。
徐宏昇弁護士
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