ニュース 法律 作成日:2021年6月23日_記事番号:T00096853
産業時事の法律講座栄光機械(栄光)とHAWEMA Werkzeugschleifmaschinen GmbH(HW)は、2011年に「グラインダーに関する協力・ライセンス契約」を締結し、許諾を受けた栄光が「五軸CNC刃研ぎグラインダー」の生産、製造、販売を行うことになりました。
メールは「通知」になるか
しかし栄光は、HWが全ての許諾文書を提供していないと主張し、13年12月から翌年1月までに3回のメールでその是正を求めましたが、応じられなかったため、14年1月30日に契約終了を書面で通知しました。また栄光は、相手方の違約によって契約を終了したので、同契約の規定により「永久かつ取り消せない無償の排他的な許諾」を得たと主張し、知的財産裁判所に確認を求めました。
一方、HWは栄光が許諾製品を生産しなかったため、13年7月に3回のメールでその是正を求め、同年12月に契約終了を書面通知したと主張しました。
同契約の規定には、契約終了には3回の通知を経なければならないとありました。第20条には、
Any correspondence relating to the Agreement shall be in English and sent to the other side by airmail. The correspondence can be sent to in advance by e-mail or fax if relevant.
(裁判所訳:本契約に関連する通知は全て英語で行われ、航空便で相手方に送信されるものとする。必要に応じて、事前にメールまたはファクスで通信を送信することもできる)と規定がありました。
そのため、双方が契約終了前に送った3回のメールが「通知」としての効果を持つかが本案の争点となりました。
同裁判所第一審、第二審はともに、「第20条後段の規定は、メールまたはファクスによる通知も有効との意味であるから、HWの契約終了は有効であり、後の栄光による契約終了は無効となる」と判断しました。
「事前に」とは
しかし最高裁は19年1月、次のような理由から同判決を破棄しました。
双方が通知の方法を約定している以上、約定に沿わない通知は無効である。同条における「in advance(事前に)」が、メールは「正式通知の事前通知でしかなく、意思表示の正式な発効は前段規定の方式による」ことを示しているかについて、裁判所は明確にすべきである。
差し戻しを受けた知的財産裁判所は10年7月、次のような理由から、栄光敗訴としました。
同条は郵送の代わりにメールを使用できるとはしていないため、双方の契約終了は無効である。栄光もHWの違約による契約終了によって永久に無償の排他的な許諾を得てはいない。
不明確な契約は争議の種に
最高裁判所は、「in advance」とは、正式な通知の前にメールの送信ができるものの、航空便の郵便こそが有効となることを指すと判断しました。この判断には議論の余地がありますが、不明確な契約内容こそが争議の原因です。
最も重要なことは、本案が「約定形式」の重要性を重視したことです。約定の形式以外にも、多くの法的行為には「法定的形式」があり、正式な規定に従わないと無効となる場合もあります。この点は注意が必要です。
徐宏昇弁護士
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