ニュース 法律 作成日:2021年8月11日_記事番号:T00097735
産業時事の法律講座近年、「犯罪の懲罰」から「損害の補償」へと政策移行した台湾の刑事政策では、一般案件、特に経済上の被害が発生した案件において、検察も裁判所も、被告人が被害者と和解し、許しを得ることを勧め、和解が成立した場合は刑事責任が軽減されます。
和解金支払いの有無
犯罪グループのリーダー潘建洲は2006年から15年にかけて、「康茂健身国際事業有限公司」を経営し、各種投資型詐欺を行いました。被害者は多数に上り、被害者は損失を取り返せませんでした。
同グループの一員であった王子瑒は、18年8月、高雄地方裁判所に潘の共犯として15件の詐欺罪で各2月から7月の有罪判決を受け、計2年4月の執行とされましたが、王は控訴するとともに、できる限り被害者と和解し、和解金を支払いました。
その後、台湾高等法院(台湾高等裁判所)高雄分院は、19年5月に王の執行を1年4月と判断。本案は上告できない案件のため確定しました。
王は判決を不服として次のように再審請求しました。
確定判決の量刑基準によれば、王が犯した詐欺罪は2件を除いて罰金による処理が可能なものである。その2件の詐欺(1年4月の実刑)については既に和解が成立し、和解金も支払っている。しかし、同判決には王は和解をしていないため罰金とはできないと記載されていることから、再審と刑の一時執行停止を求める。
台湾高等法院は19年9月に再審開始と刑の一時執行停止を決定しました。検察は抗告しましたが、最高法院(最高裁判所)がこれを認めなかったため、今度は検事総長名義で「非常上告」するも、これも20年11月に最高裁に「再審開始の決定に対しては非常上告することはできない」と却下されました。
本案件における裁判所の見解は明らかです。このような経済犯罪において、裁判所は和解と賠償を勧める立場を採っており、また和解の有無は判決の量刑に関わる重要度の高いもので、和解を見落とした場合には再審請求までも可能なのです。
徐宏昇弁護士
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