ニュース 法律 作成日:2022年6月22日_記事番号:T00103219
産業時事の法律講座伍立実業(ワールド・ニッティング・インダストリーズ)は、1998年に台湾国際商業機器(IBM台湾)からIBM/AS400コンピュータを購入し、保守サービスもIBM台湾に依頼していました。また同社は金旭資訊から、財務管理システムや在庫管理システムなどのパッケージソフトを総額1540万台湾元(約7000万円)で購入しました。
17年3月、IBM台湾は伍立実業に社員を派遣し、故障したコンピュータのハードディスクを交換した後、バックアップテープ3本から新しいハードディスクにデータをコピーしました。しかし、同社員が適切な注意を払わなかったため、テープが絡まり破損してしまい、その結果、テープに保存されていたプログラムや、過去の重要な業務情報が全て失われてしまいました。伍立実業はIBM台湾とその従業員を訴え、損害賠償を請求しました。
19年4月、第一審の台北地方法院(地方裁判所)は、IBM台湾の社員が、1本目のテープが壊れた後、残りの2本のテープも無理やりコピーし、結果的に全てのテープを破壊したとは考えにくいと判断し原告の訴えを退けました。
伍立実業の控訴を受けた台湾高等法院(高等裁判所)は、21年1月にIBM台湾に300万元の損害賠償を命じました。
高等法院は、IBM台湾の担当者に過失があり、伍立実業に報告する義務を怠ったため、3本のテープが完全に破壊されたと認定し、IBM台湾に損害賠償責任があるとしました。しかし、当事者間の契約では、IBM台湾の賠償は300万元までと定められていたため、同額の賠償しか認めませんでした。
損害賠償額も減価償却
IBM台湾はこれを不服として上告、最高裁は22年2月に次のような理由から原判決を破棄しました。
「損害賠償の目的は、債権者が被った損害の埋め合わせにあるが、債務者が補償・復元すべきは、原状ではなく、本来あるべき姿である。そのため、債務者が賠償すべきまたは支払うべき金額は、減価償却など損害発生後の状態変化を考慮する必要がある。」
同パッケージソフトウエアは長年にわたって使用されていたにもかかわらず、損害賠償額を決定する際に購入価格から減価償却費を控除しなかった高等法院の判断には誤りがあります。
司法院の判決データベースによると、その後、22年5月に当事者間で和解が成立し、本件訴えは取り下げられました。しかし、最高裁が用いた価値判断の方法は非常に特殊ですので、読者の皆さんも注意する必要があるでしょう。
徐宏昇弁護士
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