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第343回 商標の模倣とサイバー詐欺/台湾


ニュース 法律 作成日:2022年8月10日_記事番号:T00104119

産業時事の法律講座

第343回 商標の模倣とサイバー詐欺/台湾

 商標を模倣したものを販売すると商標法第97条違反となり、1年以下の懲役に処せられますが、インターネット上で模倣品を販売した場合は詐欺を伴うため、刑法第339条「放送、電子通信、インターネットその他の方法により公衆に流布して詐欺をした者」に該当し、1年以上7年以下の懲役に処されます。

 2018年1月、李文瑜は陳恵君に対して、フェイスブック(FB)グループでシャネルのバッグの販売を写真付きで広告を出すことを依頼しました。

 広告を見た王逸婕はバッグが本物だと勘違いし、6万3000台湾元(約28万円)でそれを購入、李と対面で受け渡しをした後に、2人は友人となりました。

 18年4月、バッグが模倣品であることを知った王は、李と交渉をしましたが、うまくいかなかったため、警察に告訴しました。

 被告(李)は、陳が被告の同意なしにバッグを売ったのだと主張しましたが、裁判所は、陳が掲載した広告には、友人の代理としてバッグを販売することが記載されていたと指摘しました。

 裁判所は、王が落札した後も、陳はバッグの受け渡しに関心を寄せていたし、受け渡しの過程においても、被告と陳は緊密に連絡を取り合っていたとして、陳が被告の同意なく売ったとは認められないと判断しました。

模倣品と認識

 さらに裁判所は、フェイスブックの広告写真を調べた結果、李が提示した偽物のバッグは、広告上のものと一致したことを確認した上で、「本案バッグの品質と、本物との間には、一般人でも比較すれば識別できる程度の差があった」として、被告は販売時にそれが模倣品であることを認識していたと認定しました。

 21年3月、台北地方法院(地方裁判所)第一審は、被告にサイバー詐欺罪を認め、懲役1年6月の実刑判決を言い渡しました。

 21年9月、智慧財産及商業法院(知的財産および商業裁判所)は被告の控訴を棄却、被告はこれを上告し、同時に被害者と和解しました。

 22年6月、最高裁は「被告が販売しようとした価格は、明らかな低価格というわけではなく、その広告を見た者は本物であると信じるに足るものであった」として、同様にサイバー詐欺罪が成立すると判断しましたが、被告が既に被害者と和解していたことを考慮し、執行猶予3年と、3万元の寄付を言い渡しました。

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士事務所

1991年に徐宏昇法律事務所を設立。全友電脳や台湾IBMでの業務を歴任。10年に鴻海精密工業との特許権侵害訴訟、12年に米ダウ・ケミカルとの営業秘密に関わる刑事訴訟で勝訴判決を獲得するなど、知的財産分野のエキスパート。専門は国際商務法律、知的財産権出願、特許侵害訴訟、模倣品取り締まり。著書に特許法案例集の『進歩の発明v.進歩の判決』。EMAIL:hiteklaw@hiteklaw.tw

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