ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム 会社概要 採用情報 お問い合わせ

コンサルティング リサーチ セミナー 在台日本人にPR 経済ニュース 労務顧問会員

第349回 弱い商標/台湾


ニュース 法律 作成日:2022年12月28日_記事番号:T00106719

産業時事の法律講座

第349回 弱い商標/台湾

 弱い商標とは、通常「記述的商標」のことを指します。商標の表現する意味が、製品の用途、効能、材料、原産地などの性質に関係しているため、弱い商標は登録が難しく、また登録後の保護範囲も限定されます。

文字の商標

 潔貝菈国際生技有限公司は、商標「楽膚宝」を、ペットフードへの使用を指定し、経済部智慧財産局(知的財産局、TIPO)に商標登録しました。

 2020年1月、同社は順博有限公司が販売するペット用健康食品に類似の商標「楽膚寧Qbow」が使用されており、消費者に係争製品の出所について混乱を与えているとして、智慧財産及商業法院(知的財産および商業裁判所)に訴訟を提起、順博公司による「楽膚寧」商標の使用の禁止、製品の回収、および207万台湾元(約900万円)の賠償を請求しました。

 20年11月、同裁判所は中間判決を下し、被告の商標は原告の商標と類似していると認定しました。そして21年2月には、原告勝訴の判断をしましたが、損害額を130万元に減額したため、当事者双方が控訴しました。

 二審で同裁判所は22年4月、次のような理由から、控訴を棄却しました。

1.「楽膚」は記述的な文字であり、また「楽膚」を含む多くの商標が現在登録されているが、動物用食品に関して登録されているのは、「楽膚宝」商標のみである。したがって、「楽膚宝」は、認知度の低い商標ではない。

2.「楽膚宝」商標は、一定期間市場に出回っており、相当程度の識別性がある。

3.両者の商標の違いは中国語の一語のみであり、高度の近似を構成している。

 当事者双方の上告を受けた最高法院(最高裁判所)は、22年11月に次のように判示し、原判決を破棄、差し戻しました。

1.商標が侵害を構成するかどうかの判断は、「商標全体としての外観、概念、または発音の相似」に基づいて行われるべきである。

2.原審は、全体を観察することなく、被告商品の使用している商標を「楽膚寧Qbow」ではなく、「楽膚寧」であるとしたが、これは妥当ではない。

3.被告商標には、異なる色で愛らしい意味合いを伝える英語のロゴ「Qbow」が含まれている。

4.中国語部分である「楽膚宝」は、肌に良い大切な宝のような製品、「樂膚寧」は、肌に心地よい製品という意味合いであり、概念上の違いがある。

 当事者双方が使用する商標は、どちらも犬の皮膚の健康を増進させる効果を標榜していました。「楽膚」の文字を含む商標は、当然ながら「弱い商標」です。

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士事務所

1991年に徐宏昇法律事務所を設立。全友電脳や台湾IBMでの業務を歴任。10年に鴻海精密工業との特許権侵害訴訟、12年に米ダウ・ケミカルとの営業秘密に関わる刑事訴訟で勝訴判決を獲得するなど、知的財産分野のエキスパート。専門は国際商務法律、知的財産権出願、特許侵害訴訟、模倣品取り締まり。著書に特許法案例集の『進歩の発明v.進歩の判決』。EMAIL:hiteklaw@hiteklaw.tw

産業時事の法律講座